国際医療福祉大、東大ほか、マウスにおける筋萎縮性側索硬化症(ALS)の遺伝子治療実験に成功

国際医療福祉大学臨床医学研究センター特任教授の郭伸氏と東京大学大学院医学系研究科附属疾患生命工学センター臨床医工学部門特任研究員の山下雄也氏らの研究グループは、自治医科大学特命教授の村松慎一氏らと共同で、脳や脊髄のニューロンのみにADAR2遺伝子を発現させるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを開発し、このベクターを孤発性ALSの病態を示すモデルマウスの血管に投与したところ、その運動ニューロンの変性と脱落、および症状の進行を食い止めることに世界に先駆けて成功した。

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また、発症前のみならず発症後に投与した場合でもADAR2遺伝子を運動ニューロンに発現させることで死に至る一連の過程を止め、明らかな副作用を生ずることなく、運動ニューロン死による症状の進行が抑えられた。 従来、静脈注射により脳や脊髄に遺伝子を導入することは困難とされていたが、ニューロンのみで遺伝子を発現するAAVベクターを用いることで、一度の静脈注射で効果的な量のADAR2遺伝子の発現を長期間持続させることができた。

モデルマウスでの結果ではあるが、孤発性ALS患者でも類似の分子メカニズムが働いていると想定され、今回用いたヒト型ADAR2に治療効果が得られたことからも、同様の方法での遺伝子治療の有効性が期待できる。 また、AAVベクター自体の安全性は高いことが知られており、今回の改良型AAVベクターの安全性を確認し、薬剤の効果が最も得られる用量などが明らかになれば、ALSの治療に道を拓くものと期待される。

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