産総研、人為的に設計・開発した生物発光酵素の作成に成功

産業技術総合研究所環境管理技術研究部門計測技術研究グループの鳥村政基氏らは、極めて高輝度で発光持続性に優れた生物発光酵素を人為的に設計・開発することに成功した。

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産総研では、以前から発光プランクトン(カイアシ類)の発光酵素が、分子量が小さくて強い発光強度を示す点に着目して研究を進めてきた。今回、カイアシ類の多数の発光酵素のアミノ酸配列を比較することによって頻度の高いアミノ酸を特定し、これらを独自の考え(多重整列規則)に基づいて再配列することで、これまでの天然の発光酵素とは異なる発光酵素群を作製した。自然界の生物がもつ天然の発光酵素とは異なることから、これを「人工生物発光酵素(Artificial luciferase; ALuc)」と名付けた。ALucは既知の発光酵素より最大で100倍も高輝度であり、優れた発光持続性(半減期:20分)をもっている。

既存の生物発光酵素が使用されているさまざまなアッセイ系(レポータージーンアッセイ、ツーハイブリットアッセイ、生体イメージングなど)において、ALucを用いる試験を行った結果、既存のものに比べて、感度の向上、測定時間の短縮、生体組織の光透過性などに関して極めて高い優位性があることが分かった。

今回発光酵素としてALucを開発したことにより、生命科学分野における基礎研究に貢献することはもちろん、病院での診断マーカーの高速スクリーニングや家庭での健康状態の自己管理などの医療診断分野ならびに水や食品中の内分泌撹乱化学物質などの高感度分析などの環境診断分野において、これまで感度や迅速性などの問題から適用が諦められていた、さまざまな診断への応用範囲の拡大が期待される。

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