立命館大とセイコー,LED発電を用いたゼロ待機電力起動回路を開発

立命館大学 理工学部教授の道関隆国氏は,セイコーインスツルと共同で,LED発電を利用し,使用時にのみ機器(ワイヤレスマウスやリモコン受信機など)が起動するゼロ待機電力の起動回路を開発した。待機電力を限りなくゼロにできる外部ON/OFFスイッチのないワイヤレス機器の起動回路の開発は世界でも初めての成果となる。

1

3

ワイヤレスマウスやリモコン受信機などの電池駆動のワイヤレス機器には,外部に必ずON/OFFスイッチが付いており,機器を使用するたびにそのスイッチを操作する必要がある。従来のワイヤレス機器の端末には信号を検出するセンサが必要であり,センサの待機電力が大きいため,電力の無駄な消費を防ぐために未使用時にはこのスイッチを切る必要があった。

今回,機器の電子回路を工夫することにより,待機電力を限りなくゼロにできる「ワイヤレスマウス」と「リモコンカー」を開発した。「ワイヤレスマウス」は,2つのLEDを有しており,マウスに触れない場合には2つのLEDが可視光により微量に発電する。使用時,マウスに触れた際に1つのLEDが手で隠され,発電が遮断されることでマウスが起動する仕組みになっている。この回路により,待機時の電力を限りなくゼロにすることができ,1日3時間マウスを利用したと仮定すると,従来製品よりも約2倍の電池の持ち時間を実現することができる。

「ワイヤレスマウス」の起動回路は,LED発電検出回路,nW動作起動回路,スイッチトランジスタからなり,LED発電検出回路で1つのLEDのみが発電したときのみマウスを起動する回路構成になっている。特に,起動回路は既存のワイヤレスマウスの待機電力の約百万分の1の消費電力量であるnW(ナノワット)で動作させることができ,限りなくゼロに近い待機電力を実現した。

「リモコンカー」は,車に搭載したLEDに赤外線リモコンを照射するとLEDが発電し,その電力で起動回路が起動し,車が動き出す仕組み。赤外リモコン光によるLEDでの発電量は通常距離6 mで40 pW(ピコワット)と非常に小さいため,起動回路もpWで動作する回路が必要となりる。また,赤外光は蛍光灯や太陽からもLEDに入射してくるため,それら環境光とリモコン信号光とを分離する必要がある。今回,立ち上がりが急峻なリモコンパルス信号のみを検出できる極低電力起動回路を開発した。この起動回路により待機電力をゼロに抑えることができ,ラジコンカー本体のスイッチも無くすことができた。

詳しくはこちら。