コヒレント社,パワーメータやレーザなど6つの新製品を発表

コヒレント・ジャパンは,米国コヒレント社が開発したパワーセンサやレーザなどの新製品を発表した。

■最新のセンサー技術採用,超高速応答を実現する革新的パワーセンサー「PowerMax-Pro」
革新的な薄膜技術の採用により,レーザエネルギーによる温度変化に迅速に応答し,従来の直径数cmのセンサーでは放射状に熱伝導していたが,わずか数ミクロン厚のフィルムを通して垂直方向に熱が伝導する。この結果,従来の熱伝導型センサーでは,先読み機能を使っても1秒以上,実際には測定が安定するまで10秒程度かかっていた測定が,わずか10 μs以下で終了する。

PowerMax-Pro

加えて,300 nm~11 μmまでの幅広い波長レンジに対応し,30 mm x 30 mmの大型アパーチャを採用。特に応答速度が速いため,CWレーザのパワー測定やパルスレーザエネルギー測定のサンプリング・レートを大幅に高速化することができる。これにより,レーザシステムの出力安定化を迅速に行なえるので,最終的に製造のスループットと加工制御の向上につなげることが可能。また測定波長範囲も広く,アパーチャサイズが大きいため,産業,研究開発,メディカル応用で使用されている可視,近赤外,遠赤外レーザ,特に波長10.6 μmのCO2レーザの測定でその威力を発揮する。

なお,PowerMax-Proは2種類のセンサーコーティングを用意。一つは300 nm~11μmの波長域に対応するブロードバンドコーティングモデルで,もう一つは高損傷閾値(最大14 kW/cm2) モデルで,300 nm~1100 nmと9.5 μm~11 μmの波長域に対応する。またすべてのモデルはノイズ等価パワー5 mW以下の低ノイズを実現しており,50 mW~150Wのパワー測定が水冷かファン空冷方式で行なえる。さらに対流空冷方式でも最大20Wまでの継続測定ができる。

【特長】
超高速応答:10 μs以下(HDモデル)
パワーレンジ:~150 W
30 mm x 30 mmの大型アパーチャ採用

■超高速パワーセンサーPowerMax-Pro(特許申請中)用レーザパワーメータ「LabMax-Pro SSIM」
LabMax-Pro SSIMは,既存製品のLabMaxシリーズの次世代モデルで,繰返し20 kHzまで連続してサンプリングができ,またサンプリングレート156 kHz時,350 msの連続データを取得できるスナップショットモードもサポートする。この機能により,RF励起CO2レーザやロングパルスのメディカル用レーザなど,10 μs以上のパルス幅のパルスシェープの解析が可能となった。

また,USBとRS-232を標準のインターフェースとして持ち,レーザチューニングやパルスシェープを含む測定結果をLabMax-Pro PCで表示し,制御できる。さらに専用ソフトにより,ライブ統計,ヒストグラム表示,データのロギングなど幅広い解析が可能で,これらのパラメータを一度に画面表示できる。加えて,ホストコマンドはUSBまたはRS-232を介して送られるため,特に組込み用途に適しているほか,タブレットPCやスマートフォンなどWindows 8がインストールされているデバイスでも利用できる。

LabMax-Pro SSIMは,同社のPowerMax-Pro(超高速センサー)とPMシリーズ(サーマルセンサー)と互換性がある。どちらのセンサーも校正データはEEPROMから直接読み取ることができ,ユーザは波長を入力するだけで,波長の校正データを利用できる。なお,外部トリガやアナログ出力ポートも備えている。

【特長】
PMシリーズ(サーマルセンサー)と互換性あり
PowerMax-Proとの組み合わせにより,10 μs以上のパルス幅のパルスシェープ解析が可能

■医療(ポイント・オブ・ケア)検査用 低価格超小型レーザ「BioRay」
ダイオード,コントローラ,光学系など,すべてを本体に内蔵した1パッケージ設計で,5波長(405 nm,450 nm, 488 nm, 520 nm, 640 nm)の可視モデル(出力50 mW)をラインナップ。

BioRay

ライフサイエンス用機器と医療診断機器市場の中で,BioRayは重要なギャップを埋める役割を果たすという。LED光源を上回るBioRayの卓越した性能と単純化した組込み仕様は,ハイグレードなレーザのごく一部の機能しか要求しない用途において,より小さく,より経済的な代替手段となる。また発散角の大きなLED光に対し,BioRayのコリメートされた光は,コントロールがはるかに容易。さらにLEDは外部電流を必要とするのに対し,BioRayは12 Vの電源入力だけで,高度に安定化された電源でなくとも良い。

BioRayは医療診断機器,セルアナライザ,DNAシーケンサ,フローサイトメータ,マイクロアレイスキャナに用いられている。特にその小さなサイズ,低放熱量,小実装面積,集光光学系により,これらの装置への組込みを容易にしている。また出力安定性に優れ,装置キャリブレーションを最小限に抑制できる。さらにその低ノイズ性能(<0.5% RMS @20 Hz~20 MHz)により小シグナルにおける精度の高い検査性能を可能とする。

【主な仕様】
波長:405 nm / 450 nm / 488 nm / 520 nm / 640 nm
出力:50 mW @ 405/450/520 nm,40 mW @ 640 nm,20 mW @ 488 nm
光ノイズ:<0.5 % rms (20 Hz~20 MHz)

■高出力ニーズに対応するバイオ応用向けスマートレーザ「OBIS LGシリーズ」
数Wクラスの高出力でありながら,プラグインプレイの簡易操作を実現するグリーンモデル(波長532 nm / 出力1W),UVモデル(波長355 nm / 出力20 mW)。バイオ応用において,高出力グリーンモデルはSN比の向上や,短時間でのデータ取得を可能にする。また,効率的な高調波発生により,355 nm発振のモデルを加えた。両モデルともにバイオ応用でのOEM組込み用途に対応し,ほぼ完全なモード質でTEM00発振を実現している。

コヒレントOBIS LG

他のOBISシリーズと同様に,一つのパッケージ内に共振器と制御エレクトロニクスを内蔵した小型のレーザヘッドとなっており,ビームパラメータも共通で,プラグアンドプレイの簡易操作が可能。加えて,高出力モデルへのアップグレードや多波長のレーザを装置に追加することや,同社既存のSapphireシリーズ(可視レーザ)と同寸法(125 mm x 70 mm x 37 mm)で固定位置も共通しているため,置換えがし易くなっている。

OBIS LGには,独自の光励起半導体レーザ(OPSL)技術が採用されているため,ダイオードをベースにしたUV光源と異なり,長波長側の発振がない,一定の純粋な波長が得られ,低ノイズ(0.25% RMS)を実現するため,蛍光励起の応用に最適な光源となっている。また,完全連続発振(CW)での動作が可能なため,モードロック発振のUVレーザと比較して,ピークパワーによるバイオサンプルへのダメージを避けることもできる。

装置を小型化することができ,さらにビーム質も優れているため,フローサイトメトリーやコンフォーカル顕微鏡などのOEM組込み用途に最適。特に355 nmモデルは,第一世代のDPSS(LD励起固体レーザ)やガスレーザの置換え光源として理想的としている。

【特長】
波長:532 nm(グリーンモデル) / 355 nm (UVモデル)
出力:1 W(グリーンモデル) / 20 mW(UVモデル),連続発振
コヒレント独自の光励起半導体レーザ(OPSL)技術採用

■卓越した性能と産業レベルの信頼性を実現するウルトラファースト再生増幅器「Astrella」
高エネルギー(>6 mJ),短パルス(<35 fs)および優れたビーム質(M2<1.25)を兼ね備え,産業レベルの耐久性を実現する,ワンボックス型の次世代ウルトラファーストkHz再生増幅器。安定性が高く,長期にわたり保守費用を最小に抑えることで,理科学実験におけるデータ取得コストを抑制し,今までにない高い生産性(費用対効果)を提供する。さらに,以前の機種に比べてより手頃になった保証延長パッケージは最大5年間の保証が選択でき,予期せぬ故障による予算出費の発生を削減する。

コヒレントAstrella

Astrellaの信頼性と長寿命はコヒレントの促進ストレス性能試験(HASS=Highly Accelerated Stress Screening)を出荷全数に対して実施し,産業レベルの信頼性を実現する品質管理を行なっている。また,長寿命性能は構成部品の性能の高さと,それを性能限界付近で酷使するのではなく余裕を持たせて使用することでさらに強化されている。例えば,ダイオードレーザの定格能力を大幅に下回る通常オペレーションは,出力パフォーマンスの余裕とレーザダイオードの寿命に大きな余裕をもたらすとしている。

ウルトラファースト分光や光化学のポンププローブ研究,半導体物性研究及びバイオ応用など幅広い応用に適しており,特に長期間の安定稼働が可能なので,24時間以上データを取得し続けるような過酷な応用に理想的という。

【主な仕様】
中心波長 (典型値): 800 nm
繰返周波数:1 kHz
パルス幅(FWHM):<35 fs
パルスエネルギー:>6 mJ
出力安定性:<0.5 rms *24時間測定
空間モード:TEM00,M2 <1.25

■産業レベルの信頼性を実現する理科学用サブ70 fsファイバーレーザ「Fidelity」
産業レベルの高い性能を発揮する理科学レーザの製品化プログラムの1つ,堅牢でコンパクトなワンボックス型ファイバーレーザ(パルス幅<70 fs,平均出力>2W @波長1055 nm)。

コヒレントFidelity

Fidelityは経済的でメンテナンスフリーのオシレータで,空冷,小型(318 mm x 318 mm)でありながら,マルチフォトンイメージング,THz発生,材料研究などの応用で求められる優れたビーム質(M2<1.2)を実現する。高繰返し(64 MHz)の本製品を使用することで,データの取得時間が短縮でき,研究の生産性を向上する。また,プレチャープを調整できる電子制御機能を内蔵しているため,ファインチューニングやパルス幅の最小化などが容易に調節できる。

ウルトラファースト分光やスーパーコンティニューム発生などの幅広い理科学応用に理想的で,チタンサファイアレーザと比較し,長波長で高出力および超短パルスの特長を兼ね備えている。これにより,光遺伝学(オプトジェネティクス)のような最先端のin-vivo深組織バイオイメージング応用で優位性がある。さらに同社のChameleonレーザと組み合わせて使用すると,スタンダードとマルチモダリティーの両方で,生きた動物の脳においての,同時イメージングや光活性化,また活動電位検出が必要な最先端の脳神経科学研究が可能になる。

【主な仕様】
中心波長: 1055±5 nm
平均出力: >2 W
パルス幅: <70 fs
出力安定性:±0.5 %
繰返周波数(標準):70 ±10 MHz
空間モード:(M2 < 1.2)

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