鉄道総研ら,太陽光発電の余剰電力の蓄電に応用可能な高温超電導マグネットの開発に成功

鉄道総合技術研究所と古河電気工業は,古河電工の子会社のスーパーパワー社が製造した第2世代高温超電導線材を用いた,大型フライホイール用の高温超電導マグネットの開発に世界で初めて成功した。

6

フライホイール蓄電システムは,装置の内部にあるフライホイールを,太陽光発電等の余剰電力を使って回転させることで蓄電し,発電量が減少した際に補填するように発電するもの。劣化のない「電池」として使えるもので,例えば鉄道システムの電力有効利用(回生失効対策)などにも役立つ。

このフライホイール蓄電システムは,鉄道総研が考案した超電導バルク体と超電導マグネットを組み合わせた超電導磁気軸受を適用したもので,回転する円盤を非接触で浮上させ,軸受の摩擦損失をゼロとすることで運転効率の向上を図っている。また,定期的に交換が必要であった軸受の寿命を半永久とすることが可能。

現在開発中の超電導磁気軸受は,超電導バルク体と超電導マグネットで構成され,超電導マグネットで発生する磁場に対する超電導バルク体の反磁性効果により,1組の軸受で約4トンの円盤を浮上させることを目標としている。

このためには,高強度な超電導マグネットに高磁場を発生させる必要や冷却温度を上げる必要がある。そこで今回,この超電導マグネットに使用するコイルに,古河電工子会社のスーパーパワー社の第2世代高温超電導線材を用いて,中部電力が開発した「よろい」コイル構造の,内径120mm,外径260mm のダブル・パンケーキコイル(テープ状の超電導線を薄く切ったバウムクーヘンのように巻いた,2枚で1対の扁平なコイル)とした。

この製作したコイルを,小型冷凍機を用いた液体窒素を使わない熱伝導による冷却で,51K(マイナス222℃)に保持して,運転電流である110Aでの通電と磁場を確認し,さらに線材の性能限界の163Aの通電に成功した。また,超電導バルク体との組み合わせ試験を実施し,2トンを超える所期の浮上力が出ていること,強度的にも問題が無いことを確認した。

これまでの第1世代高温超電導線材は,高磁場を発生させるために20K(マイナス253℃)以下まで冷やさなければならなかったが,第2世代高温超電導線材では,50K(マイナス223℃)の温度で運転することが可能となり,冷却コストを低減するめどが立った。今後は,さらにコイルを追加して,実規模のフライホイールの浮上試験を行なう。

詳しくはこちら。