東大ら,銀河系外縁部の暗黒物質を探る新たな目印となる恒星を発見

東京大学と南アフリカ・ケープタウン大学らの研究チームは,フレア領域に存在している恒星を世界で初めて発見した(プレスリリース)。銀河系では,天の川と呼ばれる円盤状の領域にほとんどの恒星や星間ガスが集まっている。これまで,星間ガスの観測から円盤の外側がふくれ上がるフレアと呼ばれる構造が知られていたが,そこに恒星が存在するかどうかやその分布についてはわかっていなかった。

今回発見した5つの恒星は,セファイド変光星という種類の天体で,宇宙の中で距離を測定するためにさかんに用いられる「宇宙の灯台」とも呼ばれるもの。これらの天体は,いて座あるいはへびつかい座の方向に太陽系から6~10万光年の距離に位置している。いずれも天の川と呼ばれる円盤状の領域からは3千光年以上離れており,これまでに知られていたセファイド変光星が高さ1千光年以内の円盤領域に集中している点で大きく異なる。

これら5つの天体は,2012年にポーランド・ワルシャワ大の天文学者たちが発表した研究により,セファイド変光星として報告されていた32個の天体に含まれる。この研究では,ある方向にセファイド変光星が存在しているという点のみが報告されており,セファイド変光星の距離や運動などがよくわかっていなかった。

しかし,今回の研究によりフレア領域にあるセファイド変光星であることがわかったため,フレア領域で恒星を「発見」したものとしている。フレア領域に存在する恒星の距離と運動の測定は,南アフリカ共和国の南ア天文台(SAAO)にあるIRSF望遠鏡とSALT望遠鏡を用いて行なった。

宇宙には恒星や星間ガスとは全く異なる分布をもち,銀河系のずっと外側まで広がっている重力源が存在する。これが暗黒物質と呼ばれるもの。フレア領域のように恒星・星間ガスの密度が低い銀河系外縁部では暗黒物質が,そこで運動する天体に大きな影響を及ぼしている。

そこで,今回見つかったセファイド変光星がどのように運動しているか詳しく調べることで、暗黒物質がどれだけ存在しているかを研究できる可能性が高まる。また,今回見つかった5つの天体は,同じようにフレア領域に分布するセファイド変光星のうちの氷山の一角に過ぎない可能性が高く,今後さらに多くのセファイド変光星が見つかれば,これらの天体が暗黒物質探査の新たな目印になるものと期待される。