原研ら, 光が金属中の磁気・電気の流れを切り替える可能性を発見

日本原子力研究開発機構(原研)と仏ラウエランジュバン研究所らの研究グループは,極僅かにイリジウムを添加した銅において,磁気の流れを電気の流れ(もしくはその逆)に変換する物理現象(スピンホール効果)で生じる電圧の符号が,電子同士の互いに反発しあう力によって反転することを理論的に示した。(ニュースリリース)。

近年,電子の電荷の流れである電流の代わりに,電子の磁気の流れであるスピン流を利用するスピントロニクスが次世代の省エネルギー電子デバイスとして期待されている。このスピントロニクスの実用化には,スピンホール効果を用いてスピン流を制御することが重要な課題となっている。

今回研究グループは,銅のスピンホール効果が,僅かに添加したイリジウムの電子状態によって反転することを密度汎関数法と量子モンテカルロ法を用いた理論計算により明らかにした。この計算結果は実験結果と一致するもの。

この結果は,光などの外からの刺激によってイリジウムの電子配置が変化すると,スピンホール効果で生じた電圧の符号が反転して,電流の向きが切り替わることを意味し,磁石を用いた高感度光センサの原理になると期待されるという。

研究グループはさらに,この原理を用いて,磁性体の金属がもつ熱を利用して電気を取り出す「スピン熱電発電」の研究を進展させ,排熱利用への応用が期待されることから,原子力の経済性向上や安全利用の検討に繋がる結果だとしている。

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