SIP「次世代レーザコーティング技術開発プロジェクト」が始動

内閣府が推進する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)における研究プロジェクトが昨年末から本格的に始動している。

SIPは内閣総理大臣や科学技術政策担当大臣をリーダとする総合科学技術・イノベーション会議が府省・分野の枠を超えて予算配分を行ない,基礎研究から実用化・事業化までをシームレスにつなぐ取り組みを推進するもので,光技術に関わる研究プロジェクトも採択されている。

2014年2月27日には,そのSIPで取り組む「高付加価値設計製造を実現するレーザコーティング技術研究開発」に関する研究会が,大阪大学接合科学研究所・荒田記念館(大阪府茨木市)で開催され,具体的な研究・開発の方向が示された。

レーザコーティング技術はレーザクラッティングとも呼ばれる技術だが,供給される粉末原料に対しレーザを照射し,溶融した原料粉末を皮膜化させることで製品・部品の表面をコーティングする技術で,製品・部品の耐磨耗や耐腐食などの機能向上に利用できる。

競合する技術の一つにはプラズマ粉体肉盛溶接(PTA)があるが,PTAでは入熱量が大きいため,コーティング材料が母材に希釈(母材にコーティング材が浸透する)したり,接合密度が低いといった課題もある。これに対してレーザコーティングは入熱量が低く,希釈が極小化できるというメリットがある。

「レーザコーティング技術の開発には,本技術が日本ではあまり知られていないため,イノベーションスタイルの活動を通じ情報発信し,ニーズの掘り起こしが必要」と大阪大学接合科学研究所・准教授の塚本雅裕氏は研究会で語り,レーザコーティング技術の実用化に向けての意欲を示した。

レーザコーティング技術の研究開発で目指すのは,膜厚1mm以上の高精度厚膜コーティングを可能にするモルテンプール型レーザコーティング技術と,1mm以下の高精度薄膜コーティングを可能にする非モルテンプール型レーザコーティング技術の確立だ。また,コーティング現象の解析や評価法も開発する。

このうち,モルテンプール型は粉末材料を供給しながらレーザで溶融凝固させて皮膜化させていくもので,非モルテンプール型はあらかじめ供給された粉末材料をパルスレーザ照射により先行溶融させて皮膜化させていくというもの。

レーザコーティング技術の応用分野は製鉄や産業機器,輸送機器など幅広い分野が想定されている。さらに,廉価なレーザコーティング装置の製品化も目指していることから,その波及効果も期待されている。

この研究開発には大阪大学接合科学研究所をはじめ,日本原子力研究機構,石川県工業試験場,古河電気工業,山陽特殊製鋼,村谷機械製作所,大阪富士工業が共同で取り組むが,産業利用に向けてはユーザとの連携も強化していく計画で,参画メンバーを広く募っている。

レーザコーティング技術は3Dプリンティング技術にも通じるところがある。例えば,材料を供給しながらレーザで溶融積層させるレーザメタルデポジションに応用展開が可能である。いずれにしても,今後の開発動向が注目されるところだ。