NEDO,革新的ロボット要素技術/人工知能の開発に着手

プロジェクトマネージャ NEDO関根久氏

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は,次世代ロボットに必要な中核要素技術として,革新的なセンシング技術,アクチュエーション技術,ロボットインテグレーション技術の研究開発および,次世代人工知能技術の研究開発に新たに着手する(ニュースリリース 1/2)。期間は2015~2019年度,予算は全体で10億円となっている。

産業用ロボットのさらなる適用範囲拡大や,サービスロボットの市場創出には,数多くの課題が存在するが,その主要なものとして,ロボットが環境の情報を得る能力が低いこと,アクチュエータの出力重量比が人間に及ばないこと,ロボットのインテグレーション技術が非常に複雑であることなどが挙げられる。

NEDOは次世代ロボット技術として,外乱の多い空間でも的確に信号抽出可能な「革新的センシング技術」,また,人共存型ロボットに活用できるソフトアクチュエータ(人工筋肉)及び柔軟な関節を実現する制御技術などの「革新的なアクチュエーション技術」,それらを効果的に統合動作させる「革新的なロボットインテグレーション技術」の研究開発プロジェクトを開始した。

このプロジェクトでは,テーマ公募型によりNEDOのプロジェクトマネージャー(PM)が中心となって次世代の中核要素技術の種を発掘する。

2年間の先導研究の後にステージゲートを設け,目標に対する達成度,5年目の最終目標に対する技術的な道筋と,それにつながるアプリケーションの有用性等に鑑みながら,各要素技術の研究開発内容や研究開発体制の改廃も含めたマネジメントを積極的に実施する。

また,成果普及の素地を築くべく,ワークショップを開催するなどの取り組みを通じて情報発信を行ない,アワード方式(チャレンジプログラム)を開催するなどして成果の試験的活用による動作確認や,さらなる研究開発の促進を実施することで,成果の普及を目指す。

既に18件のテーマと委託先が内定しており,9月には正式な契約締結をする。しかし,2年の先導研究期間後のステージゲートにて成果が上がらないと評価されたテーマは,そこで打ち切って新たなテーマを公募するなど柔軟な活用を行なう。

今回のテーマに採択された革新的ロボット技術のうち「革新的センシング技術」において光技術の採用が期待されたが,最終的には「人検知ロボットのための嗅覚受容体をお用いた匂いセンサの開発」(東京大学/住友化学/神奈川科学技術アカデミー),「次世代ロボットのためのマルチセンサ実装プラットフォーム」(東北大学),「ロボットの全身を被覆する皮膚センサの確立と応用開発」(熊本大学)と,光技術とは直接関連の無いの3件が採用された。

一方,次世代人工知能技術は,国内外の人工知能に関する研究所や研究者等を集約し英知を結集,次世代人工知能技術として掲げたすべての研究課題を遂行できる世界水準の研究開発拠点形成を目指し,人工知能分野の国際競争力の強化を図る。

NEDOは研究開発拠点とし,①大規模目的基礎研究・先端技術開発 ②次世代人工知能フレームワーク・先進中核モジュール研究開発 ③次世代人工知能共通基盤技術 のをすべて満足することを条件に,課題設定型の公募行なった。

その結果,産業技術総合研究所の人工知能研究センターを研究開発拠点として採択した。拠点の長としての任務は,センター長である辻井潤一氏が実施する。

また,英知を結集することで人工知能分野の研究成果を最大化する研究開発体制を目指すため,国際電気通信基礎技術研究所,国立情報学研究所,九州工業大学,信州大学,奈良先端科学技術大学院大学等の研究者についてもクロスアポイントメント契約等により,拠点に参画することを条件に部分採択することとしている。

また,日本の人工知能分野の人材が少なく,小規模分散型である現状を踏まえ,NEDOは先端分野や融合分野の技術を支える人材の育成と人的交流の面から産学連携を促進する「場」を形成するため,人工知能分野の人材育成,人的交流等の展開も併せて実施していく。