シャープ,ウェアラブルディスプレイ市場に参入


シャープは,ヘッドマウントとディスプレイ(HMD)と小型レーザープロジェクターを開発し,ウェアラブルディスプレイ市場への参入を表明した。

開発したHMDはLEDを光源としており,LCOSモジュールによる映像を目元の透明スクリーンに照射し,シースルー映像を実現する。解像度は1280×720で,3m先に32インチ相当の画面が見える。今回独自に開発したコンパクトな光学系と導光板により,他社製品と比べてより薄いスクリーンに映像を投射できるとしている。

発表した試作機は,右耳に装着するスピーカーから伸びたアームの先にスクリーンが付いている。機器全体は後頭部に回したバンドで頭に固定する。コンシューマー向けを意識したもので,テレビなどの電化製品と通信する機能や高品質なスピーカーを搭載している。ただし,外でも使用できるようにするため,盗撮を疑われるカメラはあえて付属していない。

レーザープロジェクターは,解像度はHMDと同じ1280×720,表示色は256諧調(各色8bit),コントラスト比は40,000:1,フレームレートは60fps,明るさは35 lm。小型軽量が特長で,モジュールの大きさは23×40×8mm,重さは8gとなっている。走査には独自に開発した静電方式のMEMSを用いている。

同社ではレーザープロジェクターのフォーカスフリーの特性を活かし,警備員などが制服に装着して使うことを提案している。これは,警備員が通報を受けた際,わざわざスマートフォンなどの表示デバイスを持ち出して通報の内容や場所などをチェックするより,服に仕込んだレーザープロジェクターを壁や手のひらなどに向けて確認した方が,効率が良く確認ができるという考えによるもの。


レーザープロジェクターは胸ポケットに収まるサイズ

手に投影して即座に情報を把握

 
こうした試作機は,同社がカンパニー制に移行する中で,複写機とロボットの事業部が一緒になったことで生まれた。例えばレーザープロジェクターにはRGB各色2本ずつのレーザーを使っており,その光軸のアライメントなどに同社の技術が活かされているほか,MEMSにも,複写機で培った技術が使われているという。

HMDもレーザープロジェクターも同社は後発となるが,他社に対するアドバンテージとして「我々にはディスプレイはもちろん,レーザーの技術もMEMSの技術もある。こうした技術によって製品を内製することができるので,量産化の際にはコストメリットが出るはず」(同社新規事業開発センター所長)だという。

(左)レーザープロジェクターモジュール (右)HMDモジュール

同社では市場の反応を見ながら製品化の道を探ると共に,HMD / レーザープロジェクター共にモジュール供給も行ない考えだ。モジュール供給については2016年下期にはサンプル出荷を始めたいとしており,最終的には自動車への採用も目指すとしている。