東大ら,高速電波バースト源の距離を解明

東京大学や国立天文台などを含む国際研究チームは,オーストラリアのパークス電波天文台が発見したFRBに対してすばる望遠鏡で追観測を行ない,初めてFRBが発生した遠方の銀河を突き止め,その距離が50億光年という遠距離であることを証明した(ニュースリリース)。

電波望遠鏡観測していると,継続時間がわずかに数ミリ秒という極めて短い,「高速電波バースト(Fast Radio Burst=FRB)」という謎のフラッシュ現象が起きる。数年前に発見されたばかりで,観測された電波の特徴から,パルサーなどの銀河系内の既知天体ではなく,銀河系外,しかも50~100億光年という宇宙論的な遠距離からやってきていることが示唆されていた。

しかし,直接的な距離測定はこれまで全く例が無く,実は天体現象などではなく地球大気における発光現象ではないかという主張すらあった。

研究グループは,2015年4月18日におおいぬ座付近で発生したFRBに対して,発生後数日以内にすばる望遠鏡で当該天域を撮像した。別の電波望遠鏡で観測していたグループがデータと照らし合わせ,FRBが起きた母銀河と考えらる銀河を発見した。続いてこの銀河に対して分光観測を行ない,赤方偏移がz=0.492であることを発見した。これから距離が約50億光年と求められた。

これにより,FRBは本当に宇宙論的遠距離にある巨大な爆発現象であることが明らかになり,また,宇宙における通常物質(バリオン)の大半が未検出だったという,宇宙論上の「ミッシングバリオン問題」が解決した。今後,FRBの正体を明らかにし,また宇宙論研究に応用するため,さらなる研究の活発化が期待されるとしている。

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