帝人,中国レーザー企業と太陽電池技術で提携


帝人は,中国 武漢帝尔激光科技股份有限公司(DR Laser)のレーザー設備と,帝人が世界に先駆けて開発したシリコンナノペーストを組み合わせることにより,変換効率の高い太陽電池セルの製造に向けたレーザードーピング技術確立のための戦略的提携に合意した(ニュースリリース)。

近年,太陽電池では,従来の汎用的なシリコン結晶系太陽電池の裏面の電極構造を改良することで高い変換効率を得るPERC型太陽電池,中でもPERL型太陽電池の開発が活発になっている。

PERL型(局所背面電界)太陽電池は,裏面に絶縁層(パッシベーション膜)を持ち,より多くの不純物拡散層が裏面の電極の真下に部分的に配置されることにより,シリコンウエハ(太陽電池基板)内で発生する電気を効率良く集めることができる構造になっている。しかしながら,このPERL型は,複雑な製造工程などにより工業的に生産することが難しいとされてきた。

DR Laserは,2008年に中国・武漢市で設立され,その高機能・高精細なレーザー加工技術が太陽電池の変換効率向上に寄与することから,グローパルトップの太陽電池メーカーに次々と採用されている。特にPERC型太陽電池のレーザー加工機器においては,50%以上のグローバルシェアを有する。

一方,帝人は,展開する「NanoGram シリコンナノ粒子」が,PERC型太陽電池のさらなる高効率化に重要な不純物拡散層の形成に極めて有効な材料であることを突き止め,不純物拡散層の形成に必要なホウ素やリンなどの不純物を内包する直径20㎚程度のシリコンナノ粒子をペースト加工して,高効率太陽電池用の「NanoGram シリコンペースト」を開発した。

さらに帝人は,不純物拡散層を形成したいところに印刷するためのスクリーン印刷技術と,印刷したペーストを高温でシリコンウエハ内に拡散させるためのレーザードーピング技術を2014年に開発し,世界で初めてPERL型太陽電池の工業化を可能にする「NanoGram PERC型」太陽電池製造技術の開発に成功した。

そして,これらの開発により,従来のPERC型太陽電池の変換効率が0.5%向上することを確認し,ドイツのフラウンホーファーISEと共同開発した6-inchサイズの太陽電池においても,変換効率の向上に寄与できることを実証している。

両者は今回の合意に基き,中国・武漢市にあるDR Laserの本社内に専用のレーザー加工機と印刷機を備えたレーザードーピング試作センターを新設し,4月20日より本格的に稼働を開始するとしている。