NEDOら,独でエネルギー自己消費住宅を実証実験

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は,NTTドコモ,NTTファシリティーズ,日立化成,日立情報通信エンジニアリングと共同で取り組んでいる「ドイツ連邦共和国におけるスマートコミュニティ実証事業」において,太陽光パネル,蓄電池,ヒートポンプ,HEMS(Home Energy management System)を組み合わせたシステムの実証運転を開始した(ニュースリリース)。

現在,ドイツは電力需要の20%以上を再生可能エネルギーで賄っており,政府はその比率を2020年に35%,2050年に80%にする目標を掲げているが,太陽光発電のコスト低減に伴い,すでにグリッドパリティが成立しており,固定価格買取制度が事実上終了している。このため,太陽光発電設備を設置した需要家が,太陽光発電によって発電した電力を電力会社に売電するメリットが失われた状況になっている。

また,太陽光発電からの逆潮流は配電線の容量制約や配電系統の電力品質低下の観点から受け入れられにくく,既にインバータの出力抑制を住宅用太陽光発電設備にも課している。これらのことから,太陽光発電によって発電した電力を極力,自家消費し,電力会社に売電しないシステムを構築することが喫緊の課題となっている。

このような背景から,NEDOは,100%再生可能エネルギーによる電力,熱のエネルギー供給を目標として掲げているドイツ・ラインラント=プファルツ州シュパイヤー市において,シュパイヤー市,シュパイヤー電力公社,住宅供給公社GEWO(ゲボ)社と協力し,エネルギーを地産地消し,「エネルギー自己消費モデル」を実現するスマートコミュニティ実証事業を実施することとし,2015年7月23日にシュパイヤー市,シュパイヤー電力公社と基本協定書(MOU)を締結した。

今般,集合住宅(2棟×16戸)において,太陽光パネル,蓄電池,ヒートポンプ,HEMSを組み合わせた実証システムの構築が完了したため,実証運転を開始した。

実証システムは,日射量データや各世帯の負荷パターンに基づき,太陽光発電電力やエネルギー消費量(電力,熱)を予測するとともに,仮想の電力料金モデルに応じて,電力系統への逆潮流及び,需要家のエネルギー料金を最小化するようにHEMSの制御ロジックが構築されており,蓄電池やヒートポンプを最適制御する。

また,2棟の集合住宅を「世帯単位」「棟単位」のタイプに分け,それぞれにおいてエネルギー自家消費率最大化を目指し,2018年3月までの約2年間,実際の生活環境のなかで実証システムを運転することで,その効果,信頼性,経済性を評価していく。