DNP,ナノインプリント型生産に40億を追加投資


大日本印刷(DNP)は,デジタル製品の記憶媒体である3D(3次元)構造のNAND型フラッシュメモリーの回路パターンを形成する際に使用が見込まれる,ナノインプリントリソグラフィ(NIL)のテンプレート(型)の生産設備において40億円の追加設備投資を実施し,量産体制を強化する(ニュースリリース)。

DNPは,従来からNILのテンプレート供給及び開発に注力しており,今回,3D構造のNAND型フラッシュメモリーの大幅な需要増加と低コスト化に対応するために,10nm台のNIL用テンプレートの生産体制を増強する。

近年,NAND型フラッシュメモリーの需要が急速に増加している。市場では,NAND型フラッシュメモリーの出荷額が2015年の300億ドル前半に対して2018年には500億ドル台に達し,その70%以上が3D構造になると予測されている(ガートナー社予測)。しかし,従来のフォトリソグラフィ技術による半導体製造方法では,工程が複雑な3D構造への対応が困難で,製造装置が高価になるなど,製造コストの増加が課題となっている。

この課題に対し,NILを活用した製造方法は,テンプレートから直接回路パターンを転写して複製するため,高価な光学系の設備を使用せず,比較的安価な露光装置での製造が可能。また,製造工程も簡略化できるため,従来のフォトリソグラフィ技術による製造方法に比べ,約3分の1のコストダウンに繋がる。

同社は2003年よりNILのプロセスに必須のテンプレートの開発を行なっている。2009年以降は東芝やキヤノンと共同でNILのプロセスの開発を進めると共に,これまで70億円の投資を実施して2015年には回路線幅20nmのテンプレートの量産体制を確立した。また,次世代半導体に向けて10nm台のNIL用の原版となるマスターテンプレートと,マスターテンプレートから複製するレプリカテンプレートの開発にも成功している。

世界の半導体メーカー各社は,3D構造NAND型フラッシュメモリーの製造コストの削減やさらなる微細化に対応するために,NILによる半導体製造技術の確立と生産体制を強化している。DNPもこれら半導体メーカー各社の動きに対応すべく,今回,高解像度高速EB描画(マルチビーム描画装置)やドライエッチングなどの関連プロセス装置など,40億円の設備投資による増強を図り,NILテンプレートの需要増に対応できるよう量産体制を整備する。

同社は,今後の半導体のさらなる微細化とコスト削減に対応する開発・生産体制を強化することにより,NILテンプレートで2019年に約100億円の売上げを目指すとしている。