九大ら,時系列で三次元撮影可能なTEMを開発

九州大学,システムインフロンティア(SIF),大阪大学,筑波大学は,JST先端計測分析技術・機器開発プログラムの一環として,ナノスケールで細胞や物質の観察が可能な透過電子顕微鏡(TEM)内で試料を引張・圧縮変形しながら時系列で三次元画像撮影が行なえる「その場変形電子線トモグラフィーシステム」のプロトタイプを開発した(ニュースリリース)。

透過電子顕微鏡(TEM)に三次元化するコンピューター断層撮影(CT)技術を応用して,nmレベルの立体観察を可能としたのが電子線トモグラフィー(ET)は,材料科学や生命医科学の分野を中心に近年注目されてきた。

ET観察では,通常は50〜150枚程度の試料を傾斜させた連続像が必要であり,1つの三次元画像に必要な画像データの収録に30分から数時間を要するため,動きのある物体・現象の観察にはほとんど用いられてこなかった。

研究グループは,連続傾斜像の撮影法から試料の変形・傾斜法,三次元動画像の再構成法,観察対象となる現象・材料に至る多方面から技術開発に取り組み,これらの要素技術を統合した「リアルタイムETシステム」のプロトタイプ開発を経て,金属の塑性変形過程の時系列三次元画像収録に成功した。

リアルタイムETシステムを用いた観察対象としては,変形を加えることで物理現象や材料機能が観測される固体が考えられる。また,金属材料では変形そのものが観察対象となる場合もある。金属の強度や塑性変形能といった力学的機能は原子レベルからµmスケールの微視的構造およびそれらの動的挙動を起源とすることが多い。

今回の実験では,大きな塑性変形量が期待される実用金属材料として,スズ鉛系はんだ合金を観察した。合計49枚の連続傾斜像の収録時間は2分未満だった。これにより,スズ鉛系はんだ合金が形態を変えていく様子を,ナノレベルで明確に捉えた。この時系列三次元画像データから,塑性ひずみの分布とその変化が三次元テンソル量で求められる。

さらに,試料を構成しているスズ相と鉛相の分布や結晶粒の形態・方位等をTEM観察から求めれば,観察視野における塑性変形と微細構造の関係を調べることができる。

このように,実用金属材料の変形挙動とナノスケールの微細構造を直接結びつけることができる実験研究はまだ少なく,リアルタイムETシステムは関連分野の研究に新たな進展をもたらすものだとしている。

今回開発したリアルタイムETシステムは,「リアルタイム観察」に「三次元 TEM観察」を組み合わせ,TEMの二次元(投影)観察からくる構造決定の不確かさを克服し,先端材料の未知な微視的構造とそのダイナミクスを明確に可視化する。

観察対象は,応力に応答した機能を発揮する物質や細胞などにも及ぶことが期待されるという。リアルタイムETシステムは平成29年3月までに開発を完了し,SIFから製品販売を行なう予定だとしている。

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