フェムトディプロイメンツ,液体の状態を数値化するTHz計測器を開発

液体のフェムトディプロイメンツ(FDI)は,液体の会合状態や熟成具合を,約60秒で数値化する世界で初めての計測装置「iTaster/アイテイスター」(コンセプトモデル)を発表し受注を開始した(会社HP)。

無数の分子が織りなす複雑な混合物である水や液体製品の品質について,これまでの検査装置では飲料業界で重視される「分子クラスタ(分子の集合体)」の状態を数値化する事はできなかった。

FDIでは,基盤技術としてフェムト秒パルス光源を用いたテラヘルツ電磁波計測技術を採用し,液体の分子クラスタを分光計測することで,飲料の会合や熟成の数値化を実現する「iTaster」を開発した。

水はテラヘルツ波の吸収が大き過ぎるため,水溶液も1ミリの厚みでもあると何も情報が得られない。透明な板に挟む計測セルなどで薄い液膜を作ると多重反射や板表面の汚染が測定を邪魔してしまう。

同社はディスポカートリッジで数十ミクロンという薄く均一な液体の膜を精密かつ再現良く生成し,直接テラヘルツ波で計測する渡部方式を考案。これにより前処理等の手間がかからず,汚染の持ち越しのないピュアな計測データ取得を実現した。

フェムト秒という極めて短い時間の計測をつないだテラヘルツ波の観測により,ストロボ写真を取るように水分子クラスタを含む短い寿命の会合状態の変化が反映される。これらの複合的な工夫の積み重ねにより,会合状態を分子レベルで非破壊に,そして60秒という時間で計測する事が可能となる。

従来の測定は分子集団全体の変化をまとめて測るマクロな測定と,分子やその内部構造を突き止めるミクロな測定に大別されるが、渡部方式で得られる世界は両者をつなぐ分子会合のありのままの複雑さの情報。

そのため得られるデータはあらゆる会合状態を内包しており,様々な職人の感性と関連するパラメータを与える事で,所定の目的に沿った会合状態の指標を数値化する事が可能となる。

同社は渡部メソッドにより,飲料製品・化粧品・医薬品にはじまる各々の液状製品の検査に「新たな指標」をつくり,研究開発,生産管理,品質管理に大きな改革をもたらすだけでなく,日本初のこの技術がやがて世界の標準になるだろうとしている。