千葉大ら,原子層物質のバンドギャップをコントロール

千葉大学,米SUNYバッファロー大学,米Rice大学は共同で,原子層物質の一種である二硫化モリブデン(MoS2)に,走査電子顕微鏡で電子線を照射するだけで,半導体として重要なバンドギャップが大きくなる現象を世界で初めて発見した(ニュースリリース)。

シリコンに代わってグラフェンや⼆硫化モリブデン(MoS2)といった原⼦層物質による,原⼦たった1層で作られたトランジスターが注⽬されている。⼀⽅,半導体としての性質を決める重要な特徴にバンドギャップがあるが,従来の材料ではその値は物質ごとに決まっていて,変えることはできなかった。

今回研究グループは,1層のMoS2単結晶で作られたトランジスターの中に,性質の異なる部分があることを発⾒し,⾛査プローブ顕微鏡を複合的に⽤いて解析を進めていくと,その部分はバンドギャップが広くなっていて,その境界がトランジスターとしての動作を担っていることがわかった。

さらに検証を進め,その変化の原因は,試料の作製プロセスに使っていた電⼦線リソグラフィで使⽤する電⼦線照射によるものであることを突き⽌めた。この研究により,原⼦層物質では,⼀般によく使われている⾛査型電⼦顕微鏡(SEM)といった簡易な装置で電⼦線を照射するだけで,バンドギャップを容易にコントロールできることがわかった。

フォトルミネッセンスで観察したところ,電⼦線を照射した部分では照射していない部分に⽐べてバンドギャップが最⼤で45meV⼤きくなっていることがわかった。また,計算機シミュレーションを⾏なった結果,このバンドギャップの変化は,照射した部分ではMoS2結晶の原⼦間隔が縮んでいることによることもわかった。

このようなマイルドな条件での電⼦線照射によるバンドギャップの変化はこれまでに報告された例はなく,⾛査ゲート顕微法といった最先端の顕微技術を複合的に⽤いることで初めて得られた成果だとしている。

研究グループでは,「万能性基幹分⼦」を⽤いた再⽣型のエレクトロニクスの実現を⼤きな⽬標の⼀つとして掲げている。これまでフラーレン分⼦を中⼼として,⾦属・半導体・絶縁体を⼀種類の物質で実現する研究を進めてきたが,最近MoS2などの遷移⾦属ダイカルコゲナイドと呼ばれる原⼦層物質に注⽬している。

この材料はグラフェンと同様な2次元材料でありながら,バンドギャップを有しており,また電⼦線やレーザーの照射により半導体から⾦属へと変化するといった現象も報告されている。今回の研究成果であるバンドギャップコントロールと組み合わせることで,コンピューターやメモリーだけでなく,LEDやレーザーといった様々なエレクトロニクスを原⼦層物質だけで実現できる可能性が期待されるとしている。

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