九大ら,有機ELの耐久性と微小不純物の関係を発見

九州大学,福岡県産業・科学技術振興財団,九州先端科学技術研究所(ISIT)の研究グループは,住化分析センターとの産官学連携の共同研究において,有機EL素子を短時間で製作することにより,素子の耐久性が著しく向上することを見出した(ニュースリリース)。

有機ELは真空チャンバー内で有機材料を加熱し,蒸発した材料を基板に付着させることで薄膜を積層する蒸着法によって製作される。その商品化のためには,有機EL素子の耐久性をより一層向上する必要がある。しかしながら,これまでは有機EL素子を作る装置や場所,時期等の環境によって,素子寿命が大きく異なることが知られていた。

このような寿命を低下させる外的劣化要因としては主に真空中の水分量が指摘されており,製造プロセスではチャンバーの圧力や水の分圧が管理されてきた。

有機EL素子を同じ構造で定期的に製作しても,素子の電流-電圧-発光効率特性の再現性は良好であるにも関わらず,素子寿命が製作する日によって大きく異なっていた。この結果を解析したところ,寿命は素子製作時間に大きく依存しており,有機EL素子を短時間で製作するほど,素子の耐久性が向上することを見出した。

この原因として,真空チャンバー内の不純物に着目し,チャンバーの接触角を測定することによって汚れ具合を評価した。接触角が43度と高い時に素子を製作した場合と,チャンバーを洗浄して有機EL素子を製作した場合,洗浄後は接触角が17 度に低下し,同時に素子寿命は約5倍に向上した。

チャンバー内の不純物について構造を解析した結果,チャンバーの構成部品である樹脂に由来すると思われるアジピン酸化合物やフタル酸化合物,室温であるにも関わらずチャンバー内に浮遊している過去に蒸着した有機材料とその分解物と思われる化合物等,多数の不純物が素子内に取り込まれていることが明らかとなった。

徹底したチャンバー洗浄により,チャンバー内にこのような不純物は減少し,特に過去に蒸着した有機材料とその分解物は大幅に減少した。このような不純物は素子製作時間が長いほど多く有機層に付着し,1分子層にも満たないほどの極微量と推定される不純物が有機材料蒸着中に混入することによって,劣化が引き起こされることを突き止めた。

この発見により,水分量のみならず極微量不純物量や素子製作時間を管理することで,これまで困難であった有機EL素子の寿命の再現性を確立することができた。今後,様々な有機エレクトロニクス素子の長寿命化や劣化メカニズムの解明に貢献するものだとしている。

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