筑波大ら,白色レーザーで標識物質を使わずイメージング


筑波大学と愛知県がんセンター研究所の共同研究グループは,新しい非線形光学顕微鏡を用いて網膜内の重要構造である「線毛根」が標識物質なしに可視化できることを証明した(ニュースリリース)。

線毛根はルートレティンと呼ばれる蛋白質が重合した,1㎛径にも満たない線維状構造物。感覚器に顕著な線維構造で,視力・聴覚・触覚・力覚などの感覚受容に寄与することが知られている。生きたまま線毛根が可視化できれば,ヒトでの病態評価やモデル生物での感覚機能の理解に大きく役立つと考えられるが,標識による可視化では生体本来の機能を妨害する可能性がある。

レーザー照射を用いた非線形光学顕微鏡は,標識なしに生体内物質の分布を可視化できる技術のひとつとして期待されている。その利点は,(1)電子励起を伴わないことによる光毒性効果の低減(低侵襲),(2)後述の多重観察による解析力の向上,(3)非線形光学効果による信号強度の増大(高感度),(4)近赤外レーザーによる生体深部観察能,(5)1ミクロン以下の高い空間分解能,等がある。

しかしながら実用に資するほどの物質識別能,すなわち分子同定力を得るには,光学系の改善と,モデルとなる生命現象に適用する実証実験が必要だったが,今回,研究では非線形光学顕微鏡として新たに開発した「白色レーザーを用いた多重分光顕微鏡」で,細胞の線毛根を標識物質なしに,しかも生物種に関わらず可視化できることを証明した。

研究では線毛根の重合状態を,第二高調波発生(SHG)を用いて特異的に検出した。生体組織ではこれまでルートレティンについては,その信号強度が微弱であるため検出例は報告されていなかった。

研究グループでは今後,用いるレーザーの低出力化等,低侵襲化の検討を進めることで,網膜変性疾患の診断や広範な生物感 覚研究への応用が期待されるとしている。それにより,細胞でも感じるもの,例えば力とがん化の関係なども見えてくるかもし れないという。

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