東大ら,単一超伝導ナノチューブの電気伝導性を制御


東京大学の研究グループは,イスラエルHolon Institute of Technology,同国のワイツマン科学研究所(Weizmann Institute of Science),理化学研究所らと共同で,無機ナノチューブの一種である二流化タングステン(WS2)ナノチューブに対して電解質ゲートを用いたキャリア数制御を行なうことにより,WS2ナノチューブの電気伝導性を制御できること,電子を多量にドープした領域で超伝導が発現することを発見した(ニュースリリース)。

ナノチューブは原子層物質の一つであり,炭素原子で構成されたグラフェンが円筒状に丸まった構造体と見なせるカーボンナノチューブは,強度・弾性・導電性に優れ,従来の材料にはない電気輸送・光学特性を有することから,燃料電池や光学機器等,実用化に向けた研究が盛んに行なわれている。

今回研究で対象とするWS2ナノチューブは,グラフェンに次ぐ原子層物質として近年大きな注目を集めている,遷移金属ダイカルコゲナイドと呼ばれる物質群の一つであるWS2のナノ構造体の一種。この材料は金属と絶縁体の中間の電気伝導性を示す半導体であり,固体ゲート絶縁体材料を用いた電気伝導性の制御や力学特性の研究が行なわれてきたが,超伝導を含めた電気伝導性の大幅な制御は未報告だった。

研究グループは,多層WS2ナノチューブを基板上に分散させ,単一ナノチューブのデバイスを作製し,ゲート絶縁体材料として電解質(KClO4)を用いることで電気伝導性の制御を試みた。ゲート絶縁体材料である電解質に電圧を印加すると,電解質中のイオンが物質表面や原子層物質の層間に集積して物質中に電荷が蓄積され,大幅なキャリア数の制御が可能となる。

その結果,半導体であったWS2ナノチューブに電子を蓄積して金属的電気伝導特性にすることに成功し,電子を多量に蓄積した領域では,電気抵抗が5.8ケルビン(マイナス 267.4℃)以下でゼロになる超伝導が発現することを発見した。

単一ナノチューブにおいて超伝導特性を観測したのは初めてであり,これにより従来研究されてこなかったナノチューブの特徴的な形状(円筒構造,原子層の巻き方の自由度)を反映した超伝導特性の探索が可能となる。

研究では,特に磁場下での電気伝導性の振る舞いを詳細に測定することにより,電気抵抗がチューブ軸と磁場の角度に大きく依存する異方的な振る舞いを示すことや,磁場がチューブ軸に平行な場合に,円筒を貫く磁場に電気抵抗が影響を受けること,さらに電流電圧特性が磁場と電流が平行か反平行かで異なる振る舞いを示すことを明らかにした。

これら新しい超伝導特性は単一ナノチューブに特有のものであり,前例のない特異な超伝導状態が実現されている ことを示しているという。この研究成果は,対称性が破れた低次元電子系における新奇超伝導という新たな学術分野を切り開く礎となるだけでなく,省エネルギーナノエレクトロニクスに新たな指針を与えることが期待されるとしている。

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