東大ら,結晶構造の乱れで量子スピン液体的状態を実現

東京大学の研究グループは,大阪大学,米スタンフォード大学,米ジョンズ・ホプキンス大学,米国国立標準技術研究所と共同で,パイロクロア格子を持つ量子スピンアイス磁性体Pr2Zr2O7に対する中性子散乱実験およびモデル解析を行ない,従来の定説に反して構造の乱れが量子揺らぎを増強することによって量子スピン液体状態を安定化する場合があることを見出した(ニュースリリース)。

水を冷やすと氷へと固化するように,通常の磁性体を絶対零度まで冷やすとスピンは向きの決まった固体状態となる。一方,最近の磁性体の研究において,スピンを特殊な配置に並べることにより,低温においても量子揺らぎのためにスピンが固化せずにいつまでも液体の状態が保持されるという奇妙な状態が実現することが理論的に予言され,量子スピン液体として大きな注目を集めている。

従来の研究では,構造の乱れはスピンのガラス状態への凍結を引き起こし,量子スピン液体の形成を阻害するものと考えられてきた。この定説に一石を投じる今回の成果は,量子スピン液体を示す磁性材料の開発に新たな指針を与えるものだとしている。

今回見出した乱れによる量子スピン液体と,純良試料で期待される量子スピン液体の相違点を明らかにすることは,量子スピン液体の全容を解明する上で重要となる。最近の研究により,PrとZrの組成比を制御することによって,パイロクロア構造の乱れを広範囲に制御できることが分かってきた。

組成比の精密制御により乱れのより少ない試料を合成し,これを用いた詳細な物性測定を行なうことで量子スピン液体の理解が飛躍的に向上し,将来的には量子スピン液体のエンタングルメントを利用したスピントロニクス,量子コンピュータの次世代デバイスへの応用に繋がるとしてる。

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