理研ら,「質量のないディラック電子」系を発見

理化学研究所(理研),物質・材料研究機構,名古屋大学らの共同研究グループは,単一成分の分子性結晶が高圧力下で「質量のないディラック電子」系となることを発見した(ニュースリリース)。

「質量のないディラック電子」系は,グラフェンに代表されるように,電子があたかも質量がないような粒子として物質中を高速に移動するため近年注目されている。グラフェンは,線形のバンド分散が一点で交差する特異な電子状態(ディラック分散)を示す。

このような電子状態を示す物質中では,電子が高速で移動することが可能なため,現在,世界中でディラック分散を持つ物質の探索が行なわれている。

今回,研究グループは,[Pd(dddt)2]という単一の分子で構成されている結晶が圧力下で「質量のないディラック電子」系となることを明らかにした。通常,単一成分の分子性結晶は絶縁体であり電流を流さない。[Pd(dddt)2]の結晶も常圧では絶縁体だが,共同研究グループは約12万気圧という高い圧力下では電流が流れるようになり,その電気抵抗が温度に依存しないことを発見した。このような振る舞いは「質量のないディラック電子」系の特徴であることが知られている。

次に共同研究グループは,精密な第一原理計算手法により圧力下の構造と電子状態を明らかにし,高圧下でディラック分散が実現されている可能性が高いことを見つけた。さらに,モデルを使った理論解析によって,この特殊な電子状態の実現には,異なる分子層に由来するフロンティア軌道の最高占有分子軌道(HOMO)と最低非占有分子軌道(LUMO)の混成が重要な役割を果たしていることを明らかにした。

今回,実験,計算,理論の共同研究により,通常絶縁体である単一成分の分子性結晶においても圧力をかけることによって「質量のないディラック電子」系が出現することが初めて示された。これによりディラック電子系が出現する材料の範囲が広がり,新しいディラック電子系の開発が進むとしている。

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