東北大ら,炭化水素から「スピン液体」の発現に成功

東北大学と英リバプール大学による国際共同研究グループは,化学反応によって炭化水素分子に電子を導入することで,磁石のもととなるスピンが液体のようにふるまう「スピン液体」と呼ばれるきわめて珍しい状態を作り出すことに成功した(ニュースリリース)。

スピン液体は1973年に理論的に予測された現象だが,実験によって,この特異な現象を実現することはきわめて難しく,四半世紀にわたって多くの研究者が「スピン液体を発現する物質」の探索を進めてきた。現在でもその候補となる物質はほんの数例のみという状況にある。

今回,国際共同研究グループは,温和な条件で進行する化学反応により炭化水素分子に電子を導入し,高純度の結晶を得る手法を開発した。研究対象の炭化水素は,多くのベンゼン環が繋がった構造をしている。新しい合成法の開発により,物質の組成が明らかになり,「スピン液体」の候補となる現象の発見につながった。

今回の成果は,炭化水素というごくありふれた物質によるスピン液体状態の発現であり,安価で身の回りにありふれた物質が高性能な電子材料,磁気材料に使える可能性が示されたことになるとしている。

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