産総研,屋外でも使えるパターン投影形状計測を開発

産業技術総合研究所(産総研)は,直射日光のような強い外乱光がある環境でも,光源から対象物に投影した模様(パターン)を正確に検出して,高速に運動・変形する物体の形状を計測する手法を開発した(ニュースリリース)。

形状計測には,レーザー距離計測に基づいた形状計測法や,カメラを用いた非接触な計測方法などがある。なかでも,プロジェクターなどの光源からパターンを対象物に投影し,カメラで撮影したパターンを画像処理して対象物の3次元形状を計測する手法は,運動する対象物形状の高解像度な計測に向いている。

しかし従来の方法では,直射日光など強い外乱光がある環境では,パターンを投影する光源の出力が太陽光に比べて小さいため,パターンの検出が困難であり計測が難しかった。

この課題を解決するために,スペクトラム拡散変調技術というノイズの多い環境下でも小さな出力の電波による通信を可能にする手法を画像処理に応用し,光源の照射方法と画像処理の工夫により形状計測を実現した。

今回開発した手法は,パターン光源からの信号を狭帯域信号と考え,スペクトラム拡散変調技術の一つである直接拡散方式を応用して,広い周波数に拡散する。直接拡散方式では,もとの信号に,周波数帯域を拡散させる拡散符号を掛けて信号を拡散(変調)する。

ここでは拡散符号として擬似乱数列を用い,それに従って光源をオン,オフ(1,0)させる。つまり,拡散符号にしたがって光源を点滅させながら乱数列の数だけパターンを投影することで狭帯域から広帯域信号へと拡散させる。

次に,観測対象上に投影されたパターンはカメラによって撮影され,撮影した画像群と拡散符号との畳み込み演算によって狭帯域に圧縮して逆拡散(復調)させる。

このとき画像上のノイズ,外乱光は逆に拡散され,復調時に周波数範囲外として自動的に除去されるので,復調した画像から外乱光の影響を減らせる。そのため,パターンの信号が外乱光に比べて非常に弱い場合でも,長い拡散符号を用いることでパターンを復元できる。

これにより,ノイズとなる外乱光を撮影された画像から除去して影響を少なくして,外乱光よりも低出力の光源によって投影されたパターンの検出が可能となった。屋外でも運動体を複数方向から同時に計測できるようになるなど,形状計測技術の適用範囲を拡大できる。

また,形状計測だけでなく,バーチャルリアリティや埋め込み画像など光源とカメラを組み合わせたさまざまな画像処理法にも適用できるため,広く画像処理技術に貢献することが期待されるとしいてる。

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