東大ら,テラヘルツでセシウムの測定に成功

東京大学と筑波大学の共同研究グループは,マンガン-鉄シアノ骨格錯体の箱の中にセシウムイオン(Cs+)を閉じ込めるとその箱の中でセシウムイオンがゆっくり振動することを,格子振動(フォノンモード)計算とテラヘルツ分光測定により明らかにした(ニュースリリース)。

重い質量の原子を箱の中に閉じ込めると,ゆっくりと振動し,極めて低い周波数の電磁波と共鳴するのではないかという着想に基づき,研究グループはテラヘルツ技術に注目した。このアイディアを実現するため,ナノサイズの空間を持った物質として,“マンガン-鉄シアノ骨格錯体”を合成した。

シアノ架橋型金属錯体は,3次元ネットワーク中に立方体の空隙を多数有しており,その大きさはセシウムイオンのイオン半径と同程度となっている。そこで,アイディアを実証する物質として,セシウムイオンを含んだマンガン-鉄シアノ骨格錯体について格子振動(フォノンモード)計算を行なったところ,箱中のセシウムイオンの単振動に帰属される振動モードが非常に低い周波数に現れることが予測された。

それ以外の骨格に関係する他の振動モードは,より高い周波数に存在し,セシウムイオンの単振動のモードが,低い周波数で孤立していることが示された。この計算結果に基づき,テラヘルツ分光測定を行なったところ,1.4THzという低い周波数に吸収が観測され,アイディアが立証された。

このような特徴を活かして,マンガン-鉄シアノ骨格錯体をセシウム検出マーカーとしてテラヘルツ分光法と組み合わせることで,液中のセシウムイオンの残存量を計測する実験を行なったところ,イオンの濃度を非接触で検出すると共に,高い効率でセシウムイオンを捕捉できることを明らかにした。

また,振動モードの周波数は原子量に依存するため,他のアルカリ金属イオンの吸収ピークは異なる周波数で観測される。原子力発電所事故における放射性セシウムの汚染除去は重要な課題となる。この研究のマンガン-鉄シアノ骨格錯体とテラヘルツ分光法を組み合わせた手法は,セシウムイオンの遠距離からの検出方法として有益であると期待されるとしている。

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