北大ら,開放量子系に関する理論を構築・実証

北海道大学,京都大学,中国東南大学らは共同研究により,開放量子系におけるPT対称性と呼ばれる新奇対称性とトポロジカルな性質に由来する局在状態の理論を,ある開放量子系に対し構築した。さらに,その対称性に伴う特異な局在状態を実験で観測することにより,開放量子系におけるPT対称性を世界で始めて実証した(ニュースリリース)。

1998年に,開放量子系でも粒子の流入と流出が釣り合っている場合,PT対称性と呼ばれる特殊な対称性が存在するため,エネルギーなど観測量が実数に保たれうることが理論的に示された。この理論は,孤立系を前提としている量子力学を開放量子系にも応用できる点で画期的だが,真に量子力学に従う開放量子系に対してPT対称性による記述が可能かどうかは,未解決のままだった。

今回研究グループは,粒子の流入と流出の釣り合いがとれた状況下で現れるPT対称性とトポロジカルな性質に由来する量子状態についての理論を構築した。その状態を観測することにより,理論の正当性を実証することに成功した。

今回の実験では特定のエネルギー・特定の場所の光子の減衰効果を抑制できたため,光子に対する量子的なフィルターや減衰器として用いることができる。また,増幅と減衰の効果を含むPT対称な系を将来実現できれば,光子の存在確率の増幅・減衰を安定的に制御可能になり,量子的な光子数の増幅器としての利用も可能になる。

さらに,PT対称性を有する開放量子系には,一方向輸送や単一モード増幅など,孤立系には現れない特異な現象が現れることが予想される。この特性を用いることにより,量子コンピューターの実現のために必要な構成デバイス間の情報の量子的な伝達(量子情報輸送)を安定かつ効率的に行う新たな手法などの応用への道が開ける。

また,新しい原理に基づくレーザー発振器として利用することも期待できるとしている。

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