打音法をレーザーで! 注目のレーザーによるコンクリート高速診断技術

レーザー欠陥検出法のイメージ図
レーザー欠陥検出法のイメージ図

トンネルや橋梁といったコンクリート構造物の老朽化問題を解決する技術に注目が集まっている。契機となったのは2012年に起こった中央自動車道の笹子トンネル崩落事故だが,日本のインフラ構造物は高度経済成長期に建設されたものが大半を占めており,これらの適切な保守・維持管理技術が求められている。

これまで検査手法といえば打音法が主流で,検査専門員がハンマーでコンクリートを叩いた際に発生する音の違いによってその健全性を判断していた。しかしながら,この方法では検査時間がかかるという問題に加え,接触式のため,検査員に対する安全面も指摘されていた。そこで求められているのが,高速・非接触検査技術の開発だ。

これを可能にする技術をレーザー技術総合研究所(レーザー総研),日本原子力研究開発機構(原子力機構)・関西光科学研究所,理化学研究所(理研)などの合同研究グループが,内閣府主導の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)からの委託研究(管理法人:JST)の一環として開発した。コンクリート内部の外から見えないひび割れなどの欠陥を,レーザーによって高速に検出する「高速掃引レーザー欠陥検出装置」だ。

振動励起レーザー用光増幅器の外観写真
振動励起レーザー用光増幅器の外観写真

レーザーによる欠陥検出法は西日本旅客鉄道,鉄道総合技術研究所とレーザー総研らにより,鉄道トンネルのコンクリート検査における実証実験が進められている。ただ,現状の計測スピードは2秒間に1回(検出速度:0.5 Hz)に限られている。今回,合同研究グループが開発した装置はその50倍に相当するという1秒間に25回(検出速度:25 Hz)を可能にする。

装置は,原子力機構・関西光科学研究所が開発を担当した「高速動作が可能な振動励起レーザー」と,レーザー総研が中心となって開発した「高速掃引レーザー計測システム」を組み合わせたもので,振動励起レーザーは打音法におけるハンマーの役割を担い,一方の高速掃引レーザー計測システムは耳の役割を果たす。

高速掃引レーザー計測システムの外観写真
高速掃引レーザー計測システムの外観写真

振動励起レーザーは,フラッシュランプ励起パルスNd:YAGレーザーが適用されている。高速動作を実現するため,重要となったのはフラッシュランプとレーザーロッドの温度管理だったという。従来は高速動作に伴う熱の影響によってレーザーロッドに歪みが生じ,レーザー光の品質低下を招き,結果として数メートル離れた検査対象物をレーザー光で叩くことが困難だった。

これを解決するため,レーザーロッドを効率よく冷却する専用の水冷機構を組み込んだ光増幅器を新たに開発した。複雑な冷却水路と大きな冷却水流速に耐えうる設計をハウジングに施したもので,さらに,蓄積エネルギーを大きくするため,大口径(14φ)のレーザーロッドを使用しているが,レーザーロッド内部で発生する熱レンズ効果を適切に補正するため,レーザーロッドを均一に励起できる最適な光学系を設計した。

関西光科学研究所によれば,「レーザーロッドから効率良くエネルギーを抽出するには,レーザーロッド径と同じ形状,かつ同じ大きさのビームを入射することが望ましいが,ビーム径の調整を少しでも間違えると,フリンジパターンが生じてしまう。フリンジパターンの発生を回避するために,発振器からのビームを単に大きくするのではなく,最適な形状(真円)と大きさになるように,縦横で倍率の異なる光学系を使用している」という。