東大ら,STMで電子軌道秩序を直接観察

東京大学の研究グループは,日本原子力研究開発機構,カリフォルニア大学,シンガポール大学,台湾国立清華大学等のグループと協力して,重い電子系超伝導体CeCoIn5の最表面で,電子軌道による新たな秩序状態の存在を,走査トンネル顕微鏡(STM)によって発見した(ニュースリリース)。

STMの探針を極限までCeCoIn5の最表面に近づけ,試料探針間の距離を原子スケール以下で精緻に制御したところ,原子の形状の下に隠れていた3d電子軌道を選択的に可視化することに成功した。そして,可視化された3d電子軌道が隣同士で交互に向きを変えて並んでいる秩序状態を発見した。

実験結果の詳細な解析と第一原理計算により,この秩序状態は,物質表面において増強された電子間クーロン斥力によって引き起こされた現象であることを明らかにした。同様の軌道秩序は,様々な物質表面で起こることが予想されるが,表面のごく近傍のみの電子軌道状態を調べる手法がなかったために,これまで見落とされていた現象。

また,電子軌道の秩序状態は,これまで間接的な観察しか行なわれていなかったが,今回の研究で初めて実空間での直接観察に成功している点も特筆すべき点だという。

さらに,今回発見された軌道秩序は,超伝導と共存していることから,電子同士の相互作用が織りなす様々な物理現象と深く関わっている可能性を含む。今後STMの軌道選択性が拓く物質科学の新展開が期待されるとしている。

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