産総研ら,界面での原子の動きをリアルタイム観察

産業技術総合研究所(産総研),科学技術振興機構(JST),物質・材料研究機構(NIMS),東京学芸大学,高エネルギー加速器研究機構(KEK)は,放射光表面X線回折法を従来比で約100倍高速化し,燃料電池などのエネルギー変換に伴う原子の動きをリアルタイムに観察できる技術を開発した(ニュースリリース)。

燃料電池や蓄電池では,固体電極と液体の界面での電気化学反応により,化学エネルギーが電気エネルギーに変換される。変換効率を飛躍的に高めるためには反応機構の理解が重要であり,反応の進み方を反映する固液界面の構造を原子スケールでリアルタイム観察できる技術が求められていた。

従来の表面X線回折法では,強力な放射光を用いても回折X線強度分布の測定に数分以上を要するため,実用的な精度でのリアルタイム観察は困難だった。今回,放射光X線を”プリズム”に相当する湾曲結晶に通して,波長ごとに異なる方向から試料の一点に集束する多波長のX線(波長分散集束X線)にして試料に入射させた。このX線は試料の一点から波長ごとに異なる方向に回折するので,2次元X線検出器を用いることで,各波長の回折X線の強度を一度に計測できる。

X線の波長が変わることは試料の角度が変わることと同等の効果があるため,多波長での計測により,従来法と同等の回折X線強度分布が一度に得られる。界面構造に関する情報を1秒以下で得られるため,界面構造の変化をリアルタイムに観察できる。このようなリアルタイム観察法を固液界面の観察に用いることで,電気化学反応における電極表面の原子の追跡を世界で初めて実現した。

開発した,固液界面での原子の位置変化の計測法の性能を実証するために,燃料電池反応のひとつであるメタノールの電気分解が進む様子をリアルタイムで観察したところ,重要な反応過程のリアルタイムな観察に成功し,この計測法が有用であることが示された。

今後は,燃料電池電極の劣化過程の観察や,蓄電池の界面反応過程の観察を行なうと共に,固体と固体の界面への応用も進め,全固体蓄電池などの固体積層デバイスの界面反応過程の観察も進める。得られた知見をデバイス開発や材料開発の現場に提供して高性能デバイスの開発に寄与することをめざすとしている。

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