東大ら,水素結合を見分ける振動分光に成功

東京大学とスウェーデンのストックホルム大学は,大型放射光施設SPring-8を利用して,X線のエネルギーを選ぶことで特定の水素結合環境にある水の分子振動を検出できることを示すとともに,密度の異なる水素結合環境が不均一に分布するという水の描像を裏付けることに成功した(ニュースリリース)。

水は温度を下げると密度が増大し,4℃付近で極大を迎えて最も体積が小さくなる。そして,それより低温では逆に密度が減少する。はたして,液体の水は氷に至る過程でどのように水素結合ネットワークを組み替えてゆくのか,様々な時間・空間スケールでの議論が続いている。

研究グループは,放射光軟X線の持つ特性を利用して,水素結合環境の異なる水分子を見分けて振動分光を行なった。実験の結果,従来の振動分光(ラマン散乱)では振動エネルギーが幅広く分布するが,軟X線非弾性散乱では用いる軟X線のエネルギーによって異なる振動エネルギーが現れること,つまり異なる水素結合環境が選ばれていることがわかった。

今回得られた結果は,軟X線非弾性散乱が,水の「ミクロ不均一モデル」を裏付けるのみならず,水素結合のような弱い結合環境でも違いを見分けることのできる新しい振動分光として汎用的に利用できることを表している。

水は単なる溶媒としてだけでなく,より積極的に細胞内外のイオン濃度のコントロールやタンパク質の応答,化学反応,触媒反応を精密にコントロールする反応場としての役割も担っており,これらの水の状態を抽出して水の持つ”機能”を解明する研究が今後進展することが期待されるとしている。

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