日立ら,ホログラフィー電顕で最高分解能の磁場観察

日立製作所と理化学研究所(理研)は,日立の原子分解能・ホログラフィー電子顕微鏡を用いた観察精度向上技術を開発し,材料(磁性多層膜)内部の磁場分布を0.67nmの世界最高分解能で観察することに成功した(ニュースリリース)。

電子機器や電池,モーターをはじめとした部品の性能向上のためには,高機能材料のさらなる開発が必要となる。例えば,磁性材料の性能は,複数の元素の組み合わせにより発生する磁場特性と密接に関係しており,近年は物質の境界における原子レベルの磁場が特異な振る舞いを起こすことも注目されているため,材料内部の磁場を原子レベルの超高分解能で観察する技術が求められている。

これまで同社は,微小領域の電場や磁場を直接観察できる装置として,ホログラフィー電子顕微鏡の開発を1966年から進めており,2014年には原子分解能・ホログラフィー電子顕微鏡を開発している。

しかし原子分解能・ホログラフィー電子顕微鏡では,電場と磁場が混在して観察されてしまう。そのため,これまで磁場のみを観察する場合には,電場情報のみを分離するために一度観察した後,観察する材料を180度反転させたり,材料の温度を上げたりしてから再度観察する手法を用いる必要があり,観察結果の解像度も大きく下がることが課題だった。

そこで今回,研究グループは,原子分解能・ホログラフィー電子顕微鏡で高解像度の磁場観察を実現するために,電場情報を高精度に分離する技術を開発した。

材料に極性の異なる高強度パルス磁場を交互に加えて,材料の磁化方向(N極,S極の向き)だけを反転させる技術を開発した。これにより磁化反転前後の観察結果の差分から,高精度に電場情報のみを取り除くことが可能になった。

この方法で高強度パルス磁場を加えると,電子顕微鏡の状態が変化して電子線の軌道が変わり,観察視野や焦点がずれてしまう。そこで,高強度パルス磁場の影響を考慮して観察条件を自動補正する技術を開発した。これにより,高分解能,低ノイズな観察を連続して実施可能になった。

今回,この技術を原子分解能・ホログラフィー電子顕微鏡に適用して,磁性多層膜を観察した結果,世界最高性能となる0.67nmの分解能で,材料内部の磁場分布を高精度に観察することに成功した。

今後,日立と理研は,この技術を活用することで新材料の開発を目指す。また,文部科学省先端研究基盤共用促進事業(共用プラットフォーム形成支援プログラム)の支援を通じて,この装置を共同利用し,科学技術の発展に貢献していくとしている。

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