東大,ガラスの原子配列構造から流れやすさを予測

東京大学の研究グループは,ガラス形成物質がガラス転移点近傍で示す,流れの速さが速くなればなるほど粘性が低下し液体が流れやすくなる「シア・シニング」と呼ばれる現象が,流れに対して45度の液体の構造的特徴だけで決まっていることを,複数のモデル液体のシミュレーションにより発見した(ニュースリリース)。

この現象自体はこれまでも広く知られていたが,流れにより液体の構造がどのように変わり,それが粘性や液体の構造変化の特徴的な時間にどのような影響を与えるかについては,未解明であった。

研究グループは,流れの向きから45度の方向の液体の構造を特徴づけ,それが液体のダイナミクスと一対一の対応関係を持つことを見いだした。より具体的には,流れに対して45度方向の構造的特徴(構造の乱れの度合い)と流れのない時のそれが同じであれば,両者の粘性は同じであることを発見した。

流れの向きに対して45度の方向は,ずり流れの場合,液体が流れにより引き延ばされる方向であり,この方向に液体の構造の乱れは大きくなる。この発見は,液体の構造のゆるみが,構造乱れの度合いを増し,速い緩和,低い粘性に導くことを示唆している。

また,研究グループは,この関係が,異なるポテンシャルで相互作用するいくつかの球状粒子からなるモデル系において,共通に成り立つことを見いだし,関係の普遍性を示した。

また,このような粘性の低下は,流れの速さ(ずり変形率)がある閾値を超えたときに観察されるが,この特徴的な時間は,系のダイナミクスを特徴づける時間よりもはるかに遅いこと,そして,粘性の変化は,45度方向の液体構造の変化に伴って生じることも明らかとなった。

このことは,流れによる液体の構造乱れの変化が,液体の構造緩和を特徴づける時間よりもはるかに遅い変形によって誘起されることを意味している。これらの発見は,ガラス転移点近傍のシア・シニング現象の機構を解明する上で,重要な知見を与えるものと期待されるという。また,45度方向の構造的の乱れの度合いだけから,粘性の低下の度合いを予測できる可能性があり,応用上の意義も大きいとしている。

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