東大,迷路状の孔で進む相分離を新モデルで説明

東京大学の研究グループは,多孔質中の迷路状に繋がりあった孔の中で,どのように相分離構造が形成されるかをシミュレーションにより分析した。その結果,新たに多孔質構造と相分離をそれぞれ異なる秩序変数で表し,それらの相互作用も取り入れたモデルを構築することに成功した(ニュースリリース)。

これは,多孔質物質のネットワーク状に繋がりあった複雑な孔の中で相分離が進行する際,どのように相分離構造が形成されるかについて研究を行なったもの。これまで,複雑なトポロジーを持つ三次元多孔質構造と,複数の液体などが混在する混合系との相互作用を扱う適当なモデルが存在しなかったため,この分野の研究は,単純な空間構造をもつ境界の中での相分離の研究に限られてきた。

研究グループは,複雑な多孔質構造と,相分離を表すために2つの秩序変数を導入し,壁と混合系の成分の相互作用をそれら2つの秩序変数の結合としてあらわすことで,この現象を記述しうる物理モデルを導入した。

従来,多孔質中の相分離は,ネットワーク状の孔構造を円柱状のパイプの組み合わせと考えることで理解できると信じられてきたが,この常識は全く通用せず,孔の交叉の仕方に代表されるトポロジー的な特徴が,相分離構造に決定的な影響を与えることが明らかとなった。

このようなトポロジーの影響は,実空間での構造解析により初めて明らかにできるもので,従来の光や中性子を用いた散乱実験による研究の限界も示された。

多孔質の壁と,混合系の各成分との相互作用を制御することで,さまざまな相分離の最終構造を形成することが可能なことも示された。加えて,孔の連結性が確保された三次元多孔質と連結性のない二次元多孔質中の相分離には,決定的な相違が存在することも明らかにされた。

多孔質構造は,表面積が極めて大きいという特徴を持つため,触媒,診断用ゲル,イオン交換などさまざまな分野で応用されているが,この研究成果は,多孔質状の土壌から,水と共存した石油を抽出する際にも重要な知見を与えるものとしている。

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