名大,ナノグラフェンの効率的な合成法を開発

名古屋大学は,まるでジッパーのようにベンゼン環をつなぐ新戦略によって,グラフェンの部分構造であるナノグラフェンの精密かつ簡便な合成法を開発した(ニュースリリース)。

ナノグラフェンはナノメートルサイズの幅や長さを持つグラフェンであり,基本単位であるベンゼン環が多数連結した構造を持つ分子群。これらの分子群は、その大きさや末端の構造に由来した優れた電気的性質を示すため,多くの電子機器に応用されるなど,次世代材料として広く研究されている。

しかし,ナノグラフェンの精密合成法はまだ発展途上の段階にあり,真に効率的な合成法が強く求められている。例えば,分子の数やつながり方を完全に制御しながら,基本単位のベンゼン環を連結することができれば,理想的なナノグラフェンの精密合成が可能になる。しかし,ベンゼン環を自在につなぎ合わせることは容易ではなく,構造が精密に制御されたナノグラフェンを合成することは困難だった。

ベンゼン環を連結していくためには一般に足がかりが必要で,これまで塩素や臭素といったハロゲン原子が広く使われてきた。しかし,単純にベンゼンをつなぎ合わせただけでは,目標とする構造のナノグラフェンを合成できるとは限らないため,ナノグラフェンの精密合成の実現には,全く新しい形式のベンゼン環連結反応の開発が望まれていた。

研究グループは,ベンゼン環が直線状に連結した分子であるフェニレンを「まるでジッパーで閉じる」ようにつなぎ合わせ,ナノグラフェンを簡便に合成する新手法を開発した。鍵となったのはパラジウム触媒を用いたフェニレンの新しい二量化反応。

1つのハロゲンを足がかりとして,フェニレンを一度に「2つの結合」で連結させ,ジッパーの留め具部分となるトリフェニレン構造を構築する。続くショール縮環反応によって、2つのフェニレンをまるでジッパーで閉じるようにしてつなぎ、ナノグラフェンを効率的に合成することができた。

この新触媒反応を用いた具体例として,市販されている単純なベンゼン誘導体から小さなナノグラフェン(C60H26)が簡単に合成できた。新触媒反応の一般性は高く,さまざまなフェニレン二量体が合成できる。未知構造のナノグラフェンの実現につながる分子群として,ベンゼン環を10個持つ新しいナノカーボン分子やナフタレンを持つナノカーボン分子を効率的に合成することができた。

さらに窒素や硫黄を含む二量体分子を作ることもできた。炭素以外の元素も導入できるため,有機EL材料として有用なホールを輸送する機能など,ナノカーボン分子に新たな機能を付与することも考えられるという。

この研究は全く新しいナノグラフェンの合成法を提供するものであり,有機合成化学,材料科学,触媒化学に大きな進展をもたらすものだとする。この手法で合成されるナノカーボン材料を応用することにより,曲げられる有機ELディスプレーの開発や太陽電池の効率化など,非常に幅広い応用が期待されるとしている。

その他関連ニュース

  • 理科大ら,グラフェン表面水分子の動態を解明 2020年02月10日
  • 分子研ら,色素分子合成で太陽電池の電圧損失3割減 2020年02月06日
  • 名大ら,水滴から5V以上の発電技術を開発 2019年12月17日
  • 東北大,電気分解によるグラフェン合成に成功 2019年12月11日
  • 量研ら,スピンを自在に操る積層材料を開発 2019年12月05日
  • NTTら,超高速・超省エネの全光スイッチを開発 2019年11月27日
  • 北大,ナノ領域光電場内で特異な光吸収を観測 2019年11月27日
  • 東北大,新型鉄系超伝導体を原子層シート化 2019年11月19日