山口大ら,ニオブ酸ナノシートの光操作に成功

山口大学,九州工業大学,東京農工大学は共同で,ニオブ酸ナノシートの光操作に成功した(ニュースリリース)。

グラフェンに代表されるナノシートは,極めて二次元性の高いナノサイズの粒子で,積み重なったときと,一枚一枚のときとで大きく異なる性質を示す。たとえばグラフェンは,グラフェンが積み重なった状態であるグラファイト(黒鉛)と比べ,高い伝導性を示す。磁気・光学的性質,触媒能,物質認識能などにおいても,ナノシートの状態で優れた機能を示す物質が数多く知られている。

ナノシートの形状が厚さ方向と拡がり方向とで大きく異なる事を反映し,ナノシートの性質も厚さ方向と拡がり方向とで大きく異なる。したがって,ナノシートが示す優れた性質を最大限に引き出すためには,ナノシートの向きを,「オンデマンド」,「空間選択的」かつ「自在」に制御することが必要となる。しかしながら,一枚一枚のナノシートの位置や向きを制御する技術はなかった。

研究グループは,水中にナノシートを均一に分散させ,直線偏光のレーザー光を集光して照射したところ,ナノシートは焦点でその面をレーザー光の進行方向に対して平行になるように捕捉されることがわかった。さらに,捕捉されたナノシートは,照射したレーザー光の偏光の向きと同じ向きになった。照射する直線偏光のレーザー光の偏光の向きを回転させると,ナノシートの向きはそれに同期して回転した。

次に,液晶状態にあるナノシートの光操作を行なった。ナノシート液晶に直線偏光のレーザー光を照射すると,焦点の大きさは1μmに満たないにも関わらず,焦点を中心とした100μm以上の範囲に存在するナノシートの向きに変化が生じた。

変化の生じ方には二通りあり,ひとつめは,焦点近くで生じ,ナノシートを水中に均一に分散させた系と同様だった。もうひとつは,焦点の外側で生じ,ナノシートがレーザー光の進行方向に対して平行になり,かつ,焦点を中心とする木の年輪のようなパターンに配列することがわかった。

このような,焦点の大きさの100倍以上もの大きな構造体を光により生成できた例は,今回のナノシート液晶が初めてで,厚さと拡がり方向の大きさとの差が極めて大きなナノシートならではの新しい機能となっている。

この研究は,これまで有効な手段がなかったナノシートの向きの「オンデマンド」,「空間選択的」かつ「自在」な制御を可能にした。ナノシートには,高性能な半導体素子や透明導電体としての応用が,また,ナノシート液晶には表示素子や光シャッターとしての応用が期待されており,今回の成果の応用が期待される。

また,今回利用したのは1点に集光した直線偏光だが,光は線状にもパターン状にも集光できる。さらに,らせん状の光を照射すれば,ナノシートにらせん状の配列が誘起できるかも知れない。化学反応に対する触媒機能を持ったナノシートをらせん状に配列すれば,医薬品や酵素など,らせん状の形でなければならない有用物質の反応場としての利用も期待できるとしている。
す。

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