理研,多光子レーザー顕微鏡向け球面収差補正システムを開発

理化学研究所(理研)および理研CBS-オリンパス連携センターらの研究グループは,多光子励起レーザー走査型顕微鏡専用の自動球面収差補正システムを共同開発した(ニュースリリース)。

多光子励起レーザー走査型顕微鏡は,従来と比べてより深部の構造を高解像度で観察できるため,特に脳研究分野で幅広く使われている。高解像度でのイメージングを実現するためには,高い開口数の対物レンズが必要だが,対物レンズの先端部分を満たす媒質と観察対象の屈折率が異なると,全光線は1点に集光せず,得られる観察画像が不鮮明になる(球面収差)。

球面収差は,水とガラスの間のみならず,水と生体組織の間でも生じる。このため通常,対物レンズには,補正環と呼ばれる,球面収差を補正するリング状の調整機構が備わっており,標本に応じて補正環を回転させることにより球面収差を補正できる。しかし,これまで球面収差が最小となる最適な補正環位置を客観的に決定する指標は存在しなかった。

研究グループは補正環の回転を電動化し,顕微鏡のZステージと連動させることで、焦点位置の変化を補償する(Zlin-C)デバイスと,取得画像のコントラスト値が最大となるように最適な補正環位置を計算するアルゴリズム「Peak-C」とから構成される自動球面収差補正システム「Deep-C」を開発した。

Deep-Cは,任意の深さにおいて,焦点位置を固定しながら補正環位置を連続的に変化させて複数枚の画像を取得し,Peek-Cによって取得画像のコントラストを評価し,コントラストの最大値が得られる補正環位置を最適のものとして決定する。

この研究によって,脳内部の球面収差を観測する深さに応じて連続的に自動補正することで,スパインに代表される脳内の微細構造の形態やその時系列的な変化などを,より精密に再現性高く測定することができるという。

従来,高開口数の対物レンズは,複数の人で共有して使用される場合が多いため,実験時の補正環位置が最適化されないまま,スパインの密度や大きさを誤って計測する可能性がある。スパインの形態変化は,学習や記憶の神経基盤と密接な関係があると考えられており,定量的かつ再現性の高い観察技術が渇望されている。

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