阪大ら,炭素だけでディラック電子による準結晶を実現

大阪大学,韓国成均館大学,ニューヨーク大学上海,米ハーバード大学,韓国高等科学院らによる研究グループは,2枚のグラフェンを30度の角度で重ねた薄膜を合成することで,ディラック電子による準結晶を実現することに世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

固体には,「結晶」と、「アモルファス(非晶質)」の2つの形態があるが,一方でそのいずれでもない「準結晶」と呼ばれる形態が存在する。準結晶には結晶のような周期性はないが,アモルファスとも異なり一定の規則性が存在する。例えばある準結晶では,回転させると60度毎に元と同じ構造が現れる。360度回転させる間に同じ絵が6回現れるため,これを「6回対称性」という。

結晶が持ちうる回転対称性には制限があり,2,3,4,6回対称以外現れないことがわかっている。これは正三角形,正四角形,正六角形のタイルは隙間なく敷き詰められるが,他の正多角形ではそれが不可能であることと関係する。一方で準結晶では5,8,10,12回対称という,結晶ではありえない回転対称性が現れる。すなわち準結晶とは,周期性はないが,回転対称性がある物質ということができる。

今まで知られている準結晶はAl-Ni-Coなどに代表される複雑な合金だった。一方で今回の研究で実現された準結晶は,炭素のみでつくられている。炭素の2次元物質であるグラフェン2枚が互いに30度で重なった系を生成することで,12回対称を持つ準結晶が実現された。角度分解光電子分光でその中の電子の状態を観測することで,準結晶特有の12回対称の電子構造が明らかになった。

グラフェンの電子は,相対論的ディラック粒子とよばれる,質量のない特殊な粒子として振る舞うことが知られている。今回グラフェン2枚を重ねることにより,ディラック粒子による準結晶という新しい物理系が実現されたとしている。

今回の発見は,準結晶のパラダイムを爆発的に広げる可能性を持つという。準結晶はその特異な幾何学構造から,電気的性質や熱的性質といった物理的特性に特別な性質があることが期待される。今までの研究では,準結晶は同じ元素組成を持つ結晶に比べ電気抵抗が異常に高いこと,また摩擦が少ないことが知られているが,準結晶の物性はまだ多くのことがわかっていない。今回の発見によって,準結晶の範囲が大きく広がり,新しい性質が見つかることが期待されるとしている。

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