東大ら,量子スピン軌道液体を実現する物質を提案

東京大学は,独シュトゥットガルト大学,及び,独マックスプランク研究所と共同で,α-ZrCl3という磁性体がSU(4)対称性を創発し,それによって量子スピン軌道液体を実現する可能性を見出した(ニュースリリース)。

磁性体の模型として,しばしばスピンの回転に対応するSU(2)対称性を持つものが考えられるが,相対論的な磁性体においてはスピン軌道相互作用によりこの対称性が破れ,より低い離散的な対称性に変化するのが一般的。しかし,研究では,一般的な期待とは逆に,α-ZrCl3においては強いスピン軌道相互作用対称性のもとで,より高いSU(4)対称性が創発することを見出した。

これは,スピンと軌道を混ぜ合わせる回転対称性に相当する。さらに,高い対称性が強い量子ゆらぎをもたらすため,α-ZrCl3において絶対零度でも軌道まで含めたスピンの秩序が破壊された量子スピン軌道液体が実現されることを予言した。

これは,既に実験的観測が報告されているどんな量子スピン液体とも異なる機構であり,量子スピン液体を実現する新たな道を切り拓くもの。この物質は軌道自由度の持つ磁性は消失することなく,実験室で観測することができる点で,今後,実物質での研究展開が期待されるという。

また,電子スピン共鳴を用いることで軌道自由度の量子ゆらぎ,及び,創発SU(4)対称性の存在を実験的に観測できる可能性も提案した。この成果は,今まで磁性体の研究において無視されることの多かった軌道や結晶の量子自由度を,観測し操作する可能性を切り開くものだとしている。

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