横市大ら,野外環境における植物の開花メカニズムを解明

横浜市立大学の研究グループは,米ワシントン大学とスイスチューリッヒ大学と共同で,野外では室内環境とは異なる時間に開花を誘導する遺伝子が働いていることを発見した(ニュースリリース)。

開花の時期は穀物や果実の収量に直接影響するため,作物の品種改良において重要。これまで開花の分子機構については,モデル植物のシロイヌナズナを用いた分子遺伝学的手法によって詳細な解析が行なわれてきた。

しかし,シロイヌナズナを用いた分子遺伝学では,再現性が高くなるように実験するため,光環境や温度などの栽培条件が安定している実験室内の植物栽培装置を用いて行なわれる。これまでの研究からは,日が長くなるとFT遺伝子が夕方に活性化して開花を誘導する鍵分子「フロリゲン」をつくり,それによって開花が始まると考えられていた。

今回研究グループは,実験室での試験管内(invitro)と生体内(invivo)に加えて,野外変動環境(innatera)で遺伝子機能を研究する重要性を提唱。野外で日の長い条件(長日条件)でシロイヌナズナが開花する分子メカニズムの研究した。

まず,野外で4時間ごとに24時間にわたって遺伝子解析用サンプルを採取。そのサンプルを用い,フロリゲンFT遺伝子の発現量(働き度合い)を調べたところ,これまでの実験室での解析では夕方にピークが見られていたのが,今回の野外の解析では朝に発現のピークが見られた。

この朝の遺伝子発現ピークは,シロイヌナズナが近年移入された米シアトルだけでなく,シロイヌナズナの野生分布地域であるスイスチューリッヒなどでも観察されたことから,植物本来が持つ性質であると考えられるという。

研究グループは,標準的な安定した室内栽培条件を変更して,野外の朝の遺伝子発現ピークを再現できる条件を探索。赤色光と遠赤色光の比率を野外と同様に1:1に近づけ,また昼夜の温度変動を加えることで遺伝子発現の朝のピークを再現することに成功した。

この栽培条件で開花メカニズムをつかさどる遺伝子の解析を進めたところ,遠赤色光受容体フィトクロムAなどが野外での植物の開花に特に重要であることが新たに解明。さらにこれまでの栽培条件よりも開花が早まることも分かったという。

開花制御の分子機構の研究では実験室内ではなく,複雑に変動する野外において植物がどのように環境情報を取捨選択し開花の時期を制御しているかを解明することが最終的な目的。今後この研究結果により,正確な開花・収穫時期の制御の実現が期待されるとしている。

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