広島大,500倍の光増強効果を酸化チタンで観測

広島大学の研究グループは,光の強度を500倍に増強する効果(電場増強効果)を酸化チタン(TiO2)で初めて観測した(ニュースリリース)。

酸化チタンは多くの優れた特長を持ち,特に「本多-藤嶋効果」による酸化チタンの光触媒効果が利用されている。また近年では,変換効率27%を超え,世界中でしのぎを削っているペロブスカイト太陽電池の材料としても重要となっている。

一方,光の増強効果の研究は,金・銀等の貴金属で行なわれており,特に金ナノ粒子はインフルエンザの検査キットや妊娠検査薬にも利用され,また最近ではがん細胞の光熱治療(体外からのレーザー照射)の材料としても研究されている。

しかし,貴金属は希少かつ高価で,またその他の金属は表面の酸化が懸念されるため,安定・安心・安価で大きな増強効果をもつ代替物質として半導体が注目され始めている。

今回,研究グループは,化学的にも物理的にも安定な酸化物半導体で,且つ幅広く実用化されている酸化チタンにおいて,発光の巨大な増強効果を初めて見出した。この大きな増強効果を生み出す試料(酸化チタンの多孔質膜)は,以下の2つの工程から簡便に作製できる。

①市販の酸化チタン粉末を常温で水・アルコールと粉砕し微細化,②①で作った溶液をガラス板等に滴下して常温で乾燥し成膜。作製した試料は大面積で,簡便な製造法は社会での実用化にも高い優位性を持つ。増強効果の評価は,色素分子の発光スペクトル測定により行なわれた。

その結果,酸化チタンの存在により色素分子の発光強度が500倍に増加した。これは酸化チタン微粒子が光を局所的かつ効率よく散乱し(ミー共鳴),微粒子近傍の色素分子の光吸収の効率が飛躍的に高まったことによる。

また,実験値に基づいた単一分子での増強効果は最大30000倍の増強度を示した。実験と計算の両者で,サイズが500nmの酸化チタン微粒子が最大の増強度を与え,その値は同じサイズの金や銀の微粒子を超えた。さらに計算機シミュレーションより,酸化チタン微粒子間の距離が数nmに接近すると,ホットスポットとよばれる巨大な増強効果の出現が確認された。

なお,2017年12月にフランスのグループが,酸化チタンのナノディスクによる増強度2倍の発光増強を報告している。それに比べこの研究は,①常温・常圧で試料をより簡便に作製,②試料の面積がより大きい(1cm2),③ホットスポットによる巨大な増強,が大きな優位点。

今回の発見は,太陽電池,光センサー,ディスプレー,照明,光触媒,日焼け止め等の他,ペロブスカイト太陽電池の高効率化など幅広い応用が期待されるとしている。

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