東大,グラフェン中の点欠陥による電場分布を直接観察

東京大学の研究グループは,最先端の走査透過型電子顕微鏡と分割型検出器を駆使することにより,グラフェン中に形成された点欠陥であるシリコン単原子の配位環境に伴う,異方的な局所電場変化の観察に初めて成功した(ニュースリリース)。

今世紀に入り,熱力学的に不安定と考えられていた2次元物質(単層からなる物質群)が発見され,単層グラフェン(蜂の巣配列の炭素原子シート)は様々なエレクトロニクスへの応用に向け,多くの基礎研究が世界中で行われている。

グラフェン固有の性質(物性)を理解するには,欠陥領域における原子構造すなわち原子配列を決定することが重要な鍵となる。原子レベルでの欠陥構造解析には高い空間分解能が必要であり,原子分解能電子顕微鏡による直接観察が極めて有効という。

しかし物性の理解には,従来の原子配列決定に加え,原子間に形成される化学結合の分布を明らかにする必要がある。化学結合は原子間に働く力(原子核と電子)の分布であり,原子間に形成される電場分布を観察できれば,化学結合の方向性などの空間分布を可視化することができると期待される。しかし,その信号強度は極めて小さいため,実際に観察することはこれまで極めて困難であると考えられてきた。

今回,研究グループは,走査透過型電子顕微鏡(STEM)と独自に開発した分割型検出器により,単原子層グラフェン中の点欠陥であるシリコン単原子と炭素原子間に形成された局所電場の実空間観察に成功した。

グラフェン中のシリコン単原子は3配位あるいは4配位の配置となることが知られており,その配位環境により化学結合分布が変化することが予想される。化学結合が存在するとシリコン原子と炭素原子間の電場強度が弱められるため,シリコン単原子の電場分布は球対称ではなく,配位環境に依存して3回あるいは4回対称な強度分布が形成されることが実験的に確認された。

これまで化学結合(電子構造)を決定する手法としては様々な分光法が用いられてきたが,その空間的な分布を原子レベルで直接観察することは極めて困難だった。今後,今回の手法をさらに発展させ,電荷密度分布の直接観察することで様々な物質の特性を電子のレベルで明らかにできる可能性があるとしている。

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