理研ら,太陽電池駆動の皮膚貼付け型心電計測デバイスを開発

理化学研究所(理研)と東京大学の共同研究グループは「超薄型有機太陽電池」で駆動し,心電波形を計測する「皮膚貼付け型心電計測デバイス」の開発した(ニュースリリース)。

伸縮性のある薄型有機太陽電池は近年,皮膚や布地に密着させて,より高精度な生体信号を計測する次世代センサー用の電源として注目を集めている。「皮膚貼りつけ可能なセンサー」が,長時間安定的に生体情報をモニタし続けることができれば,健康管理を常時行なう「モノのインターネット(IoT)社会」における生体センシングが実現可能になる。

研究グループはこれまでに,超薄型かつ高いエネルギー変換効率と耐水性,大気安定性,耐熱性を持つ「超薄型の有機太陽電池」を報告してきた。しかし皮膚に貼りつけが可能なほどの超薄型電源とセンサーとが集積化されたデバイスは,衣服や皮膚などの変形や光の入射角度変化の下では太陽電池の出力が不安定になるため,報告されていなかった。

この問題を解決をするため,研究グループはまずフレキシブルな超薄型有機太陽電池の開発に取り組んだ。その結果,作製した太陽電池のエネルギー変換効率は,これまでのフレキシブル有機太陽電池の世界最高効率(10.0%)を更新し,10.5%を達成した。また同時に,課題だった光入射角度依存性を低減することにも成功した。

成功のポイントは,ナノスケールの規則正しい線状の凹凸パターンである,「ナノグレーティング構造」を超薄型基板上に形成する技術を確立したこと。厚み1μmの超薄型基板上の太陽電池の「電子注入層と半導体ポリマー層の両方に」高さ数10nm,周期約700nmのナノパターンを形成した。

この周期的なナノグレーティング構造が,光の屈折率を調整して太陽電池表面での光の反射を低減させ,同時に薄膜内部での光散乱の増強と金属電極での表面プラズモン共鳴効果を起こすことで,より効率的に入射光を発電に利用することが可能になった。その結果,エネルギー変換効率の大幅な向上と,環境光発電に有利となる光の入射角度に対する効率変化の抑制につながった。

次にこの超薄型有機太陽電池を,研究グループで開発を進めている有機電気化学トランジスタを利用した皮膚貼付け型の超薄型センサーと集積化することで,心電波形を計測する「皮膚貼付け型心電計測デバイス」を作製した。これを人体の皮膚に貼り付けたところ,外部電源なしに心電計測デバイスが駆動し,信号対雑音比(S/N比)25.9dBという高い精度での信号取得に成功したという。

今回開発したデバイスが,今後は取得した生体情報を処理する回路や無線伝送システムと統合することにより,次世代の自立駆動型センサーシステムの基盤技術提供が期待できるとしている。

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