理研ら,AIによる細胞内1分子自動観察システムを開発

理化学研究所(理研)と大阪大学の研究グループは,人工知能(AI)を組み込み,「細胞内1分子イメージング」を完全自動化した革新的な顕微鏡システム「AiSIS」を開発した(ニュースリリース)。

1分子イメージングは,分子を蛍光によって光らせることで可視化し,細胞で働く個々の分子動態を直接観察する手法。この手法は高倍率の光学顕微鏡での焦点合わせや,観察に最適な細胞の探索など,経験を積んだ研究者の手作業に頼る過程が多く,大量のデータ取得が求められる研究への利用には向いていなかった。

今回,研究チームは,高速・網羅的な細胞内1分子イメージング解析を実現するため,深層学習(機械学習手法の一つ)などの人工知能技術とロボット技術を利用し,顕微鏡の操作から薬剤添加,細胞観察,画像解析に至る一連の計測・解析過程を自動化した細胞計測システムを開発した。

同システムは,温度・湿度・二酸化炭素(CO2)濃度の制御が可能な細胞培養器の中に設置され,イメージング用超高感度カメラ,1分子観察用の全反射照明光学顕微鏡,溶液添加ロボット部から構成される。また,コンピュータにより,1) 自動フォーカス,2) 自動細胞選択,3) 対物レンズ自動オイル供給,4) 細胞試料自動搬送,5) 自動溶液添加などの一括制御が可能となっている。

自動計測システムにはあらかじめ,正解,不正解それぞれの状況を反映した画像を学習させた。焦点合わせでは,観察面に像を結ばせた視野絞りの輪郭を焦点位置の目印として学習に用いた。

細胞認識では,蛍光分子の密度が適切で1分子イメージングに適した細胞の蛍光像をあらかじめ取得し,教師データとして学習に用いた。実証実験の際には,学習した正解に最も近い像が得られる対物レンズの位置と,観察すべき細胞を,計測システム自身が探し出す。焦点合わせの場合,さらに画像解析を組み合わせることで,±181nmの位置精度を達成した。

また,細胞探索は,人が探すと探索時間が細胞ごとにまちまちになり,蛍光プローブの退色の影響により定量性が低くなる場合がある。これに対し,自動計測システムは一枚のスナップショット(露光時間33ミリ秒)から観察に適した細胞を瞬時に判断できるため,蛍光退色の影響を最小限にとどめ,定量性を確保できた。

完成した自動計測システムによって,一日あたり1,600細胞(含まれる分子は約1,000万個)の1分子イメージング解析が可能となった。これは熟練研究者と比較しても10倍以上の効率に相当するという。

細胞の分子動態の計測・解析効率の飛躍的な向上をもたらすこのシステムは,生命科学のさまざまな分野での研究を加速させるほか,1分子動態の変化を指標とした新たな薬剤スクリーニングなどへの応用が期待できるとしている。

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