北大ら,微小重力下で天体の組成スペクトルを取得

北海道大学は,宇宙航空研究開発機構(JAXA),東京大学,千葉工業大学と共同で観測ロケットを用いた微小重力実験を実施して,晩期型巨星で酸化アルミニウムの微粒子が作られる過程を再現し,未同定赤外バンドと同様の赤外バンドを得ることに成功した(ニュースリリース)。

赤外線スペクトルは鉱物の指紋に例えられ,ダストと呼ばれる鉱物微粒子が吸収する赤外線の波長位置や吸収の強さは,その種類や温度,形,大きさに応じて敏感に変化する。そのため赤外線スペクトルが得られれば,そこに存在している微粒子を特定することができる。

しかし,得られる赤外線スペクトルの特徴は,既知の鉱物や実験合成物のスペクトルとは合致せず,有効活用できていない。例えば,宇宙で微粒子が生成する場である晩期型巨星の赤外線スペクトルを測定すると,その波長の中で13µm付近に0.5~1.1µmの幅を持った特徴的なバンドが見られる。

この起源物質として,高融点で,かつ豊富に存在する元素からなる鉱物の酸化アルミニウムが提案されている。しかし,実験から得られる酸化アルミニウムの13µmバンドは5µmを超える広い幅を示すため,確証が得られていなかった。

今回,研究グループは,JAXAの観測ロケットを用いて得られる約8分間の微小重力環境下で酸化アルミニウムのガスを発生させ,冷却の過程で微粒子が生成する様子を赤外線スペクトルで測定した。

地上実験では重力による対流が生じてしまうが,観測ロケットを用いることで,重力がほとんどない環境で対流を抑えた,より天体に近い条件で実験が行なえる。実験室用に開発した「浮遊ダスト赤外スペクトルその場測定装置」を小型化して搭載することで,宇宙ダストと同様にガスから生成する酸化アルミニウム微粒子の赤外線スペクトルを測定した。

同様に,酸化アルミニウムの微粒子が形成する際の中間赤外領域のスペクトルを測定した結果,未同定赤外バンドと同様の0.5µm程度の狭い幅を持つ13µmバンドの取得に成功した。

また,13µmバンドの出現に先立って,液滴由来の特徴が表れたことから,酸化アルミニウム微粒子はガスから直接形成するのではなく,液滴を経由する二段階の生成過程(核生成過程)を経ることがわかった。微小重力環境を利用することで,宇宙ダストの生成過程を再現することができ,かつ,天体観測のデータと直接比較できる赤外線スペクトルを取得できることが明確になった。

今後,他の鉱物に同様の実験を行ない,宇宙ダストの形成を伴う様々な天体現象の観測データと組み合わせて,恒星風(恒星表面から吹き出すガスの流れ)の化学組成や密度,温度環境など,様々な物理・化学パラメータを決定できるようになるという。

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