阪大ら,電子ビームを集束してプラズマ加熱を効率化

大阪大学,広島大学,米ネバダ大学,レーザー技術総合研究所,東北大学,自然科学研究機構核融合科学研究所,光産業創成大学院大学,仏ボルドー大学の研究グループは,ネオジム磁石の約600倍の強さを有する600テスラの磁場を高密度プラズマに印加することで,短パルス高強度レーザーで加速された電子ビームを集束し,プラズマを効率的に加熱出来ることを実証した(ニュースリリース)。

レーザー核融合の「高速点火」方式は,主流の「中心点火」方式とは全く異なる過程を経て,核融合の「火」を点ける方式。米仏で行なわれている「中心点火」方式では,流体混合が原因で点火が起こらないという問題に直面しているが,「高速点火」方式はこの流体混合の問題を回避することができ,主流に替わる手法として注目されている。

「高速点火」方式では,まず①複数のナノ秒レーザーを用いて核融合燃料を予め高密度に圧縮し,②ピコ秒の高強度レーザーで瞬間的に加熱することで,③核融合を点火し,燃料の大部分を燃焼させ,エネルギーを生み出す。

短パルス高強度レーザーによって生成されたほぼ光速の電子ビームが高密度核融合燃料プラズマに突入し,そのエネルギーの一部を燃料に付与することによって加熱が起こる。しかしながら,高強度レーザーによって加速された電子ビームは,大きな発散角(典型的には全角で100度)を持っているため,電子ビームの多くは燃料と衝突せずただ通り過ぎてしまうという欠陥があった。

質量が軽く電荷を持つ電子は,磁力線に沿った方向に移動しやすいという特性を有している。研究では,キロ・テスラという地上最大級の強磁場を用い,1MeVという高エネルギーの電子を,百ミクロン以下の微小な核融合燃料に磁力線に沿って誘導し,効率的な高密度プラズマの加熱を達成した。研究グループは,この方式を「磁化高速点火」と名付けた。

今回,加熱レーザーから高密度プラズマへのエネルギー付与率は最大で8%を達成した。このエネルギー付与率は加熱対象であるプラズマの密度に依存することが分かっている。

核融合点火の条件で計算すると,この研究で得られたエネルギー付与率は,主流の中心点火方式よりも数倍高い値に匹敵する。つまり,磁化高速点火方式は,非常に効率的で,レーザー核融合エネルギー開発にとって魅力的であるという。

この研究成果を活用すれば,高温・高密度,高圧力を有する高エネルギー密度プラズマを効率的に生成することが可能になることから,高エネルギー密度科学,実験室宇宙物理学への応用研究も期待されるとしている。

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