金工大ら,大口径遠赤外光学レンズの開発に着手

金沢工業大学,にいがた産業創造機構,放電プラズマ焼結法のシンターランド,長岡工業高等専門学校の産学官研究グループは,世界で初めてとなる硫化亜鉛(ZnS)を使った航空宇宙分野用大口径遠赤外光学レンズの開発に着手した(ニュースリリース)。

航空宇宙分野では,数キロ離れた小さい対象物を高分解能に撮像するために,直径100~140㎜,高さ70㎜以上の大口径な高性能レンズが求められる。そのために対候性が高い,大口径レンズの実現に大きな期待が寄せられている。

8~12μmの波長域の遠赤外光学レンズの素材には,ゲルマニウム(Ge),セレン化ゲルマニウム(GeSe),硫化亜鉛(ZnS)の3種類があるが,ゲルマニウムとセレン化ゲルマニウムは希少金属のため原材料費の変動が大きいことや入手性が不安定になることが問題となっている。一方,硫化亜鉛は資源制約がないため価格変動問題がほとんどない上,雨浸食や気温変動がある過酷な環境にも耐えられるため,屋外での使用に適している。

現在,直径40mm以下の小口径赤外光レンズは,成膜技術の一つである結晶合成用化学気相成長(CVD法)により作製したブロック材を,超精密切削等の機械加工により製造している。

ところが,この方法を大口径レンズの製造に用いた場合,加工用の大型ブロック材形成や加工に7日間以上の日数が必要であること,厚いレンズを一度に複数製作することが不可能であること,レンズ加工による歩留まりを考慮すると製造工数や費用が膨大になるという問題がある。

またCVD法で硫化亜鉛材料を製造する場合には,毒性の高い硫化水素ガスを大量に用いるため,作業の危険性や環境負荷の観点から,事実上,製造は不可能とされている。

今回,研究グループが新規に開発を目指す放電プラズマ焼結技術による成形は,硫化亜鉛の原料粉末を放電プラズマで焼結しながらレンズそのものの形状(ニアネットシェイプレンズ)に成形するもの。切削加工自体が不要のため製作期間は2日間と,大幅に短縮できるとともに,歩留まりの向上や,厚いレンズも一度に作れる,有害な硫化水素ガスを使用しないなど,さまざまなメリットがある。

直径100mm以上,高さ7mmの大型口径レンズの開発はこれまで成功例はない。この技術開発は世界的にも優位に立てる製品を生み出す地方発の取り組みとして,高い期待が寄せられるとしている。

研究グループは,中小企業庁 平成30年度予算「戦略的基盤技術高度化支援事業」の選定を受け,2021年までの3年間で放電プラズマ焼結技術による製造技術の確立を目指す。また将来的には宇宙望遠鏡市場への進出も視野に入れている。

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