山梨大ら,光記憶結晶にナノスケールでパターンを描画

山梨大学,龍谷大学,及び情報通信研究機構(NICT)の研究グループは,ナノメートルサイズの針先の近接場光により,光記憶性能を持つフォトクロミック単結晶の表面に光の波長以下の大きさのパターン(アルファベット)を描き,さらに消去することに初めて成功した(ニュースリリース)。

分子が光によって構造を変えるような光と物質の相互作用は,意思決定,解探索,認識などの知能システムの構築を目的として活発に研究されている。フォトクロミック物質の可逆的光異性化(フォトクロミズム)は今後の光機能システムの重要な要素と考えられる。その物質の中でも,ジアリールエテンは熱的に安定で,結晶状態でもフォトクロミズムを示すことから特に注目されている。

研究グループは,これまで光プロセスのみでは実現が困難であった光情報記憶を,ジアリールエテン結晶の光異性化現象と近接場光励起を組み合わせ,ナノメートルスケールで実現する可能性に着目した。

今回の研究では,光異性化に伴う分子構造変化の大きな新しいジアリールエテン分子を合成し,昇華法によって結晶化した。一般的なジアリールエテンと比べて数倍大きな構造変化を示すため,光異性化に伴う機械的歪みが大きくなり,表面形状の変化も大きく観察に適しているだけでなく,光異性化の周辺への広がりが強く抑制されることで局所性の優れた光異性化を可能にした。

近接場光による励起と,光異性化の観察を,光支援型原子間力顕微鏡で行なった。観察に使用する赤色レーザー光を顕微鏡探針の先端に当てて,先端曲率半径(今回使用した探針では8nm)と同程度の範囲に小さな光(近接場光)を発生させた。この針先の近接場光を結晶表面に作用させ局所的な光異性化を起こし,光異性化に伴う分子構造変化によって生じる結晶表面の形状変化をAFMによって随時その場で観察し,光の波長以下のスケールにおけるナノ光メモリとしての基本性能を確認した。

近接場光による局所光異性化の二次元的付与によるアルファベットパターンの形成と消去近接場光励起を二次元的に複数点加えることで,フォトクロミック分子の一種であるジアリールエテン分子が規則的に並んだ結晶の表面に,ナノメートルサイズの光により直径約30nmの書き込み(光異性化)を行なうことに世界で初めて成功した。

この書き込みを繰り返し行うことで,光の波長(500nm程度)より小さな範囲にアルファベット「UY」のパターンを描くことができた。さらに,針で表面をなぞりながら局所光異性化をパターン全体に均一に加えることでパターンを消去可能であることを確認した。

今回の研究は,コンピュータ等で実装されている学習機械をナノメートルスケールで複雑な電気配線をせずに実現するばかりでなく,曖昧さや時間的不安定さを含む問題にも柔軟に応答する自然界の複雑な数物構造を模した,全く新しい機能を生む可能性があるとしている。

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