北大,蛍光分析法でエアロゾルの有機物を観測

北海道大学の研究グループは,海しぶきによって海水から大気の微粒子(エアロゾル)へ移行する有機物に著しい組成の変化が起きていることを発見した(ニュースリリース)。

大気に浮遊するエアロゾルは太陽光を散乱・吸収するほか,雲を生成する核として,雲の量や降水過程に影響を与えるなど,気候の変動に重要な役割を果たしている。エアロゾルには有機物が最大80~90%もの割合で含まれ,中でも海洋の表面から放出される有機物は,エアロゾルが核として雲を形成する上で重要であると考えられている。

地球の表面積の約7割を占める海洋の表面には,微生物の活動に伴う有機物が蓄積し,海しぶきにより大気へ放出される粒子の組成に影響すると考えられている。しかし海洋の表面から大気へ放出される有機物の情報は,測定の難しさもありこれまでほとんど得られておらず,海水中の有機物の組成が大気の組成に与える影響はほとんど理解されていない。

研究グループは今回,植物プランクトンが増殖する直前の時期である初春(2015年3月)に西部北太平洋親潮と沿岸親潮域において海水から大気へ移行する有機物の変化を捉えるため,大気と海水を同期させた観測を実施した。

海しぶきの同定には,海水起源を示すエアロゾル有機物の安定炭素同位体比と分子レベル指標の測定結果,海洋表面の風速からデータを抽出する独自の手法を用いた。さらに抽出した海しぶきであるエアロゾル試料と対応する海水試料を用い,蛍光分析法により生物学的に分解されやすい有機物(タンパク質様)と分解されにくい有機物(腐植様)の存在割合を両試料について測定し,比較した。

この比較の結果,海水中と比べ,大気エアロゾル中ではタンパク質様の有機物よりも生物学的に分解されにくい腐植様の有機物が著しく多く(平均163%)存在していることを見出した。

さらにこの傾向は,エアロゾルの大きさによらず,どの試料でも起きていることが明らかになった。これは半日から1日の間に,エアロゾルとして大気へ移行する有機物において,タンパク質様の有機物が著しく分解されること,もしくは腐植様の有機物が大気エアロゾル中でより多く生成することを示唆するという。

研究グループはこの研究で,温暖化等に起因する海洋表層の微生物の量,組成,活性の変化が,有機物の大気への放出を通して雲の生成に影響することによる将来的な気候影響,さらには日射量,気温の変化など,海洋へのフィードバックを高い精度で評価する上で重要な知見となるとしている。

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