京大ら,テラヘルツパルスによる結晶成長機構を発見

京都大学,筑波大学,東海大学,産業技術総合研究所の研究グループは,高強度テラヘルツパルスを相変化材料GeSbTe化合物(GST)に照射すると,アモルファス状態からナノスケールで結晶成長する機構を発見した(ニュースリリース)。

GSTは2つの相(原子が規則正しく並んでいる結晶相と不規則に配列するアモルファス相)を電気的にスイッチングすることが可能であるため,コンピューターや電気デバイスの省エネルギー化に貢献する不揮発性メモリとして期待され,ごく最近IntelやMicronといった大手半導体メーカーが量産を開始した。

電気的スイッチングは,電流を流したときに発生するジュール熱によって相変化を制御することによって実現される。しかし,ナノ秒程度続く電気パルスを用いるため,加熱中に熱がマイクロメートル程度に拡散してしまい,ナノスケールの超小型のメモリ開発には熱の拡散を抑制することが極めて重要であると考えられてきた。

今回研究グループは,高強度のレーザーパルスから生み出された高強度テラヘルツパルスを用いることにより,ナノ秒の電気パルスよりも3桁も短い高電場を試料に加え,熱の拡散を極限的に抑制し,アモルファスGST薄膜においてナノスケールの結晶化を引き起こすことに成功した。

試料として用いた代表的な相変化材料であるGST薄膜(膜厚40nm)は,ガスイオンなどを固体ターゲット試料に照射して,衝撃によってターゲット材料から粒子を放出させ,基板に堆積させて薄膜試料を作製する「スパッタリング法」により作製した。

さらに研究グループは,テラヘルツ電場を加えた瞬間の試料の光学応答を調べることによって,高強度・短パルスなテラヘルツパルスの電場が加えられると,GST薄膜内部でゼナートンネリングによって大量のキャリア(電荷を運ぶ自由電子)が生成していることを解明した。

この大量のキャリアは結晶相の電気伝導度をアモルファス状態に比べ約100倍程度上昇させる。このため結晶化した部分の先端にテラヘルツ電場が集中し,結晶部先端でのジュール熱による結晶成長が逐次的に進むため,電場方向に沿った異方的な結晶成長を引き起こすことを可能にしたという。

この研究成果は,メモリのスイッチング動作において瞬間的に生じる高電場効果を明らかにし,またナノスケールという極めて小さな構造変化の誘起が可能なことを示したもの。研究グループは今後,この研究により相変化メモリの小型化や高効率化にもつながることが期待できるとしている。

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