京大ら,反強磁性体スピントルク磁気メモリを実証

京都大学は,東北大学と共同で,コバルト・ガドリニウム(CoGd)合金多層膜から成る反強磁性材料を用いた反強磁性体スピントルク磁気メモリを実証した(ニュースリリース)。

高度情報化社会の発展に伴う情報量の急激な増加に伴い,情報記録デバイスの超高記録密度化・低消費電力化が求められている。

ハードディスクドライブや磁気ランダムアクセスメモリに代表されるような磁気記録デバイスでは,コバルトや鉄,ニッケルなどの強磁性体から成る記録層に,電流(あるいはスピントルク効果)や磁場で“0”か“1”のデジタル情報を書き込む,すなわち磁気モーメントの反転により記録する方法が用いられている。

これら従来の磁気記録デバイスでは,強磁性体自身から発生する双極子磁場(漏れ磁場)によるビット間干渉の問題が,超高記録密度化への壁となっている。

一方,反強磁性体は,特有の性質を利用することで,電流では書き込み(磁気モーメントの回転)ができるが,外部磁場擾乱には強い磁気メモリが実現できる。したがって,反強磁性体磁気メモリの実現は漏れ磁場の問題を解決し,磁気メモリの超高記録密度化へのブレークスルーとなることが期待されるという。

今回研究グループは,反強磁性材料としてコバルト・ガドリニウム(CoGd)合金多層膜を用い,組成の異なるCoGd合金(Co86Gd14とCo62Gd38)を積層させることでそれぞれの層の磁気モーメントが反対方向に向いて結合した(反強磁性結合状態)記録層を作った。

さらに,この記録層をプラチナ(Pt)層で上下から挟みこむことでメモリ素子構造とした。このメモリ素子において,繰り返し書き込み(“0”,“1”)の後,それぞれ読み出しを行ない,(“0”,“1”)に対応して素子の抵抗が変化することを実証した。また6x106A/cm2程度の電流で書き込みが可能なことが分かった。

同様の素子において外部磁場による書き込みを試みたところ,数キロエルステッド(磁界強度の単位)程度の磁場では満足に書き込みができないことを示し,電流で書き込みができるが,外部磁場では書き込みが容易ではない(外部磁場擾乱に強い)磁気メモリの実現・実証に成功したという。

研究グループは,今回の研究が反強磁性体における磁気モーメント操作の新しい物理を開拓するものであり,超高記録密度・低消費電力の磁気メモリ開発につながるとしている。

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